東京五輪・パラリンピックまで、あと90日を切るなか、呆れたバトルが始まった。政府の責任大臣である丸川珠代五輪担当相(50)が、主催者である東京都の小池百合子都知事(68)に対し、
「東京都の新型コロナ対策の医療体制はどうなっているの!」
と噛みついたのだ。
2人は5年前の都知事選から「犬猿の仲」で知られるが、背景には都議選への思惑もあるという。いったいどうなっているのか――。東京五輪は、本当にやる気があるのか!
都議選をめぐる因縁の2人の探り合い
現在の、東京都の小池百合子知事が自民党に反旗を翻して初当選した2016年の都知事選では、自民党都連の幹部である丸川珠代五輪担当相は、自民党候補を応援、街頭演説で、
「小池さんのようなスタンドプレーの大好きな人間に、日本の首都は任せられません!」
と激しく批判していた。今回はその「因縁のバトル」が表面化した。
その背景には、東京五輪の直前に行われる東京都議選の思惑があると分析するのは、スポーツニッポン(2021年4月28日付)「丸川五輪相、小池都知事に苦言 五輪時の医療体制問い合わせも無回答『戸惑っている』」である。
「小池都知事は丸川氏の(自分への批判)発言について、報道陣に『既に実務的に詰めている。連携しながらやっていくことなので、コミュニケーションを取る必要がある。安全安心な大会にすべく、それぞれが力を出していく』と強調。苦言への答えを避けた印象だ」
まずは、小池都知事は丸川五輪相の攻撃を軽くいなした形で、スポーツニッポンはこう続ける。
「小池氏の言動は五輪開催直前となる都議選(7月4日投開票)も関係していそうだ。自民党都連の顔でもある丸川氏と、同党に弓を引く形で知事選に打って出た小池氏は犬猿の仲。失地回復を目指す自民党と公明党が再接近したが、地域政党『都民ファーストの会』特別顧問の小池氏は情勢を見極めているとみられ、都議選対応を明確にしないでいる。五輪時の医療提供体制の考えについても、中止決定も視野に入れ、批判を招く(前のめり姿勢)と映らないよう回答を留保しているのではと指摘する声も出ている。丸川氏の苦言は『小池ステルス戦略』をあぶり出す神経戦の側面もありそうだ」
橋下徹氏「小池氏は五輪中止を見据えている」
それにしても、東京五輪にあと90日を切った現在、政府の「顔」と東京都の「顔」が角を突き合わせて大丈夫か――。
4月28日放送のテレビ朝日モーニングショーでは、政治ジャーナリストの田﨑史郎氏が、
「丸川さんがいきなりケンカを売ったようだが、そうではない。丸川さんは就任後に小池さんに挨拶に行き、『入国の水際対策は国、医療は都でやりましょう』と仕分けしたが、東京都からその後の話がこない。丸川さんが電話して『どうなっているのでしょうか』と言えば済む話だが、非公式では話が進まないので、公開質問状を出したということです」
と、丸川氏擁護の解説をした。
これに対して、元週刊AERA編集長の浜田敬子さんが、
「看護師500人の要請は、『医療が逼迫しているこのタイミングで言うのか』というのが国民の率直な感想」
とチクリ。テレビ朝日コメンテーターの玉川徹さんも、
「こういう楽屋裏の話をわざわざ会見で言う意図は何なのか。政府が都と一体となって協力できていないことを国民に明らかにする意味は何なのか。こんなことやっていたら国民に疑念を持たれるだけです」
と猛反発していた。
一方、元大阪市長で弁護士の橋下徹氏が4月27日、TBSの「ゴゴスマ~GoGo Smile」に出演。丸川珠代五輪相と小池百合子都知事のバトルについてこうコメントした。
「小池さんのほうが一枚も二枚も上手ですよ。小池さんは世間の、有権者の感覚に乗っかるのは天才的な能力がある。この状況で世論調査やっても中止、延期が圧倒的多数です。だからこんなところでやる、やると前のめりしてしまうと民意が離れる。状況を見て本当に無理だなとなったとき、それを感じれば一段早く中止というのではないか。小池さんがリードしてなんとなく世間が思っていた中止に先鞭をつけたことになる」
都議選も控えており、「中止」カードを切るタイミングを見計らっているのではというわけだ。
(福田和郎)