医療危機なのに五輪に看護師を引き抜くとは
多くのメディアが「しんぶん赤旗」の後追い記事を報道。組織委は批判にさらされた。翌4月26日、組織委の理事会が開かれ、終了後、武藤敏郎・事務総長が記者団の質問の矢面に立たされた。その時の模様をデイリースポーツ(4月26日付)「東京五輪避けられぬ医療負荷...反発必至 組織委『シフトで対応』も『バイトじゃない』が、こう伝える。
「武藤敏郎事務総長は『この度、日本看護協会に500人の確保を検討していただけるようにお願いをした』と認めた。新型コロナの感染拡大で医療体制の厳しさは増しており、大会側が『引き抜く』形になれば世論の反発は必至。武藤事務総長は『地域医療に悪影響を与えない必要がある。そのためにはどうするか。勤務時間やシフトを相談しながら、最も対応可能なやり方を考えたい』と説明したが、国民の理解をどのように得るか? との問いには『地域医療への悪影響は避けなければいけない。どのように折り合うか。先ほども言ったとおり、時間とシフトで対応していけるのではないか』と重ねるだけだった」
デイリースポーツはこう続ける。
「『シフトで対応』発言には、医療関係者からは『バイトの穴埋めじゃないんだから』との批判の声も上がる。海外メディアからも『選手は毎日PCR検査を受けるというが、計算すると数万件になる。どうやって医療体制の負担をなくすのか。五輪がなければ、その分、リソース(資源)を利用できる』と問われたが、武藤事務総長は『原則としてアスリートは入国後、一定期間毎日検査できれば望ましいが、滞在中毎日する必要はないだろうと思う。件数についても考えて、実現可能なやり方を考えたい』と説明。水面下で看護協会と交渉に入っていたことについて、透明性を問われた武藤事務総長は『事前にオープンにするようなことではない。通常ルートでの相談』と話した」
このような武藤事務総長のあいまい、かつ無責任な説明で納得するメディアは少ないだろう。メディアの追及の矛先が、政府の東京五輪の責任者である丸川珠代・五輪担当相に向かったのは当然だった。