やっぱり携帯電話ショップはお客をなめきっていた! 「高い料金プランに勧誘」が4割以上

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「どうもいろいろと必要がないオプションを付けられた気がする」
「ペラペラしたセールストークに乗せられて高い買い物をした」

   携帯電話ショップで契約を済ませた後に、釈然としない気持ちで店を出た経験はないだろうか。

   じつは、携帯ショップの店員の4割以上がお客に「高いプラン」を勧誘しているのだ。総務省が現役の店員らから聞いた「覆面調査」で、大っぴらに行われているユーザーをなめ切った行為の実態が明らかになった。

  • 携帯ショップにだまされていないか?
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「ノルマを達成しないと自分の給料に響くんで」

   総務省が「覆面調査」の内容を発表したのは2021年4月26日、有識者会議による「携帯電話会社の競争ルールの検証会議」の席上だった。

   総務省が公開した資料によると、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天モバイルの大手4社の販売ショップ(代理店)で働く店員や、離職後1年以内の元店員を対象に3月にインターネット上でアンケート調査を行い、412人から回答を得た。

   また、それと別にNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの3社を対象に、代理店経営者の聞き取り調査も行った。

   総務省は勧誘に際し、利用者の知識や目的に応じて十分な説明をするよう指針(ガイドライン)を定めているが、違反しているケースが目立った。

   「利用者のニーズや意向を丁寧に確認せずに料金が高いなどの上位の料金プランを勧誘したことがあるか」との問いに、「ある」と答えた者が4割強に達した。さらに、「高額なスマートフォンやオプションなどを含めた勧誘をしたことがあるか」と尋ねると、「多くの回答者」が「ある」と答えたのだった。

   いったい、なぜ強引な営業をしてしまうのか――。ショップの店員たちからは、こんな理由が寄せられた。

「キャリア(大手携帯電話会社)が設定する手数料体系は、戦略的に取り組めば十分採算がとれるようになっている。しかし、異常な目標設定が課せられる場合がある。適正な販売手法の研究をしないで目標を達成しようとする甘い経営手法の代理店が多いことも事実だ。無理販売発生の原因は異常な目標と代理店の経営姿勢との双方に存在しており、代理店としての経営努力不足も問われていると思う」
「無理な販売はよくないが、利用者の言うことだけを聞いて、新たな提案をしないのも営業の社会的使命からすると、よくない。利用者が気づかないニーズを開拓するのも販売代理店としての社会的役割であり、腕の見せどころだ」
「キャリアからは合理的とは言いがたい高い数値目標が設定されており、利用者が求めていないサービスを積極的に勧誘する必要がある」
「キャリアが設定する指標のほとんどで高得点を取らないと稼ぎにならない仕組みには違和感がある。個性を発揮できる領域があるべきではないか」
「獲得しなければならない商材についてのキャリアからの指標が多岐にわたり、利用者にオプションや他業種の商材など、多種多様なものをお勧めしなければならない。利用者からは感謝をされることは少なく、スタッフは罪悪感ばかりがたまっていく」
「評価が中位以下の代理店は手数料が相当程度絞り込まれ、経営が困難だ」

などと、大手携帯会社からの厳しい目標設定を理由にあげる人が多かった。なかには、

「営業目標の達成の有無が自分の給与に影響する」

という意見もあった。

違法なのに、端末のみの販売拒否する店が3割

回線契約に来た人に端末を買わせて儲ける仕組み(総務省の『覆面調査』の報告書より)
回線契約に来た人に端末を買わせて儲ける仕組み(総務省の『覆面調査』の報告書より)

   また現在、「通信と端末の分離」を法律で決まっているのに、通信契約をせずに端末の購入だけを求める顧客に対して、販売を拒否するケースが目立ち、「違反行為」が横行している実態が浮かび上がった。

   販売を拒否する割合は、NTTドコモ系列のショップで22.2%、KDDI(au)系列で29.9%、ソフトバンク系列で9.3%にのぼった。総務省の各社担当者からの聞き取りによると、各社が内部で確認した「販売拒否率」はNTTドコモ系列が3.3%、KDDI(au)系列が1.3%、ソフトバンク系列が2.3%だから、いかに多くの「違反行為」が隠されているかがわかる。

   かつて携帯ショップの収益は、端末販売の手数料と契約数に基づく奨励金が柱だった。通信サービスの契約と端末の購入が常にセットになり、その中で割引サービスなどが行われていた。

   しかし、携帯大手による「行き過ぎた囲い込み」が問題となり、2019年に電気通信事業法が改正されて、「通信と端末の分離」が行われた。料金プランと端末代金が分離され、端末の割引も制限された。携帯大手は携帯ショップに対し、端末の卸価格を高くし、回線契約の獲得を重視する姿勢に転換している。

   このため、全国約8000店の携帯ショップは苦境に立たされることになった。特に総務省が問題視するのは、ショップが扱う端末はキャリアから卸したものに限られる一方、卸価格がキャリアのオンライン直販価格とほぼ一致する点だ。仮に代理店がキャリアの直販価格で端末を売った場合、端末販売自体による粗利はゼロ円になってしまう。だから、顧客には「頭金」などという訳のわからない手数料を追加することが多くなる。

   こうした問題点について、ショップの店員たちはアンケートでこう訴えた。

「『頭金』は消費者に誤解を招きやすく、セールストーク上も問題があるので望ましい商習慣とはいえない。代理店による適正な販売努力によって手数料が十分に確保できていれば、徴収する必要はない」
「キャリアからの端末の卸値がそのまま販売価格となっており、販売価格自体に利益分を上乗せできないシステムになっていることが問題だ」
「店頭支払金、いわゆる『頭金』の設定は自由にできるが、ユーザーに対して、これは何の金額か?と問われたときに説明が難しい状況だ(当店の利益分です、とは言いにくいため)」

   また、ドコモの「ahamo」、auの「povo」など、携帯大手がオンラインで申し込む新プランを増やしていることに危機感を募らせる声もあった。

「オンライン専用プランのアフターサポートは店頭ではできないが、端末が故障した場合の修理や代替機の貸与は店頭のほうが都合はよい。オンライン専用プランの加入者が店頭に来ることを考えるべきだ」
「端末の独自修理や利用者のリテラシー向上に資するセミナーの開催など、代理店にできる独自ビジネスもあるはずなので、認めていただきたい」

   総務省は、今回の「覆面調査」で電気通信事業法のルールが形骸化しているとして、各社に是正を求めていくという。

「総務省が違法行為に甘いのは接待関係ですか?」

   今回の調査について、ネット上では「総務省は違法行為に甘い!」という批判の声があふれている。

「このショップの基本姿勢は詐欺なんじゃないか? 目的が自分の利のためとあっさり白状している。どうしてこんな詐欺行為をこれまで放置していたのだろう? やっぱり接待関係ですか?」
「クルマ業界でも度々ニュースになるが、圧倒的に強い立場のメーカーがディーラーや代理店に無理難題を押し付けて商売している。ノルマがあまりに高過ぎて現場は疲弊するばかり。で、離職率が高くなり、人の入れ替わりが激しいため人材教育がいい加減になる。モラルの欠けた店員が事故、事件を起こしてもメーカーは知らん顔。総務省は携帯キャリアに値下げを要請することも重要な仕事だが、滅茶苦茶な道理がまかり通る商いの方法にもメスを入れてください」
余計なオプションを追加されている人が非常に多い
余計なオプションを追加されている人が非常に多い
「細かい話に聞く耳を持たないお年寄が格好のカモになっている。ところで、頭金は『あたまきん』じゃなくて『とうきん』なのが注意点。『店頭販売金』の略称。漢字で書くと同じに見える略語にするのがそもそも悪い。なぜショップが『とうきん』を取るかというと、キャリアからは契約を取った成功報酬だけが支払われて、顧客へのサポート費用は支払われていないから。そのため、サポート費用の原資として『とうきん』が設けられているわけ」

   一方、「端末のみの販売を拒否」する店員が多い問題については、こんな意見があった。

「元携帯ショップ店員ですが『端末のみの販売を拒否する店員』が多いのではなく、『端末のみの販売のやり方がわからない店員』が多いのだと思います。登録が非常に難解かつ時間がかかるため、販売したくてもできない店員が圧倒的に多かったです」
「人気端末の仕入れ数が少ないショップだと、『お金様』(=通信契約をして、盛りだくさんのオプションに入ってくれる人)に回す分がなくなるからね(笑)。だから面倒くさくて利益にならないことはしたくない。ショップは、『お金様』から粗利をあげてナンボの世界ですから」

   また、「通信」と「端末」の分離を徹底させるべきだという意見が多かった。

「キャリアが端末を売ること自体が『抱き合わせ』を生むことになるから、キャリアの端末販売を禁止すればいい。通信業者は本来の事業である『通信』だけで商売して、端末は電気店かメーカーが売る、でいいじゃないか」
「そもそも論として、回線と端末を完全分離すればよいだけの話。家庭の固定電話機だって色々なメーカーが電話機単体で売っている。それと同じにすればよい。NTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天をはじめ、SIMフリー会社など回線を扱う会社は一切の端末販売を禁止にさせ、端末販売店は端末の販売のみにする。ユーザーは端末を買って契約したい通信業者に行き、契約する。諸外国はこの方式でやっているのだから、日本でできない理由はない」

(福田和郎)

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