違法なのに、端末のみの販売拒否する店が3割
また現在、「通信と端末の分離」を法律で決まっているのに、通信契約をせずに端末の購入だけを求める顧客に対して、販売を拒否するケースが目立ち、「違反行為」が横行している実態が浮かび上がった。
販売を拒否する割合は、NTTドコモ系列のショップで22.2%、KDDI(au)系列で29.9%、ソフトバンク系列で9.3%にのぼった。総務省の各社担当者からの聞き取りによると、各社が内部で確認した「販売拒否率」はNTTドコモ系列が3.3%、KDDI(au)系列が1.3%、ソフトバンク系列が2.3%だから、いかに多くの「違反行為」が隠されているかがわかる。
かつて携帯ショップの収益は、端末販売の手数料と契約数に基づく奨励金が柱だった。通信サービスの契約と端末の購入が常にセットになり、その中で割引サービスなどが行われていた。
しかし、携帯大手による「行き過ぎた囲い込み」が問題となり、2019年に電気通信事業法が改正されて、「通信と端末の分離」が行われた。料金プランと端末代金が分離され、端末の割引も制限された。携帯大手は携帯ショップに対し、端末の卸価格を高くし、回線契約の獲得を重視する姿勢に転換している。
このため、全国約8000店の携帯ショップは苦境に立たされることになった。特に総務省が問題視するのは、ショップが扱う端末はキャリアから卸したものに限られる一方、卸価格がキャリアのオンライン直販価格とほぼ一致する点だ。仮に代理店がキャリアの直販価格で端末を売った場合、端末販売自体による粗利はゼロ円になってしまう。だから、顧客には「頭金」などという訳のわからない手数料を追加することが多くなる。
こうした問題点について、ショップの店員たちはアンケートでこう訴えた。
「『頭金』は消費者に誤解を招きやすく、セールストーク上も問題があるので望ましい商習慣とはいえない。代理店による適正な販売努力によって手数料が十分に確保できていれば、徴収する必要はない」
「キャリアからの端末の卸値がそのまま販売価格となっており、販売価格自体に利益分を上乗せできないシステムになっていることが問題だ」
「店頭支払金、いわゆる『頭金』の設定は自由にできるが、ユーザーに対して、これは何の金額か?と問われたときに説明が難しい状況だ(当店の利益分です、とは言いにくいため)」
また、ドコモの「ahamo」、auの「povo」など、携帯大手がオンラインで申し込む新プランを増やしていることに危機感を募らせる声もあった。
「オンライン専用プランのアフターサポートは店頭ではできないが、端末が故障した場合の修理や代替機の貸与は店頭のほうが都合はよい。オンライン専用プランの加入者が店頭に来ることを考えるべきだ」
「端末の独自修理や利用者のリテラシー向上に資するセミナーの開催など、代理店にできる独自ビジネスもあるはずなので、認めていただきたい」
総務省は、今回の「覆面調査」で電気通信事業法のルールが形骸化しているとして、各社に是正を求めていくという。