女性IOC委員「五輪の可否は医療者が判断すべき」
その東京五輪だが、緊急事態宣言を受けて海外が日本の状況を見る目も一段と厳しくなった。
スポーツニッポン(4月24日付)「豪 五輪最終予選に選手団派遣せず 飛び込みW杯、緊急事態宣言を受け」が、早くも選手の派遣を危険視する国が出て来たことを伝えている。
「水泳・飛び込みのオーストラリア連盟は4月23日、東京五輪最終予選とテスト大会を兼ねて5月1日~6日に東京アクアティクスセンターで行われるW杯(ワールドカップ)に選手団を派遣しないと発表した。東京都に緊急事態宣言が再発令される状況を踏まえ『派遣が安全でないことが明確となった』とした。 W杯で争う出場枠について今後、国際水泳連盟と交渉する。国際水連が掲げる『安全で公平な五輪予選』を、この時期に開催することは『現状では不可能だと考えている』と訴えた」
そんななか、カナダの女性IOC(国際オリンピック委員会)委員が、「東京五輪の開催の可否はIOCではなく、医療専門家が決めるべきだ」という画期的な主張を訴えた。アイスホッケーなどで6回の五輪出場歴があるヘイリー・ウィッケンハイザーさんだ。今年2月、森喜朗・前東京五輪組織委会長の女性差別発言が問題になった際、
「今夏、東京で会いましょう。あなたを必ず追い詰めます」
とツイートした人である。
カナダのCBCスポーツ(4月23日付)「Hayley Wickenheiser again sounds alarm, saying wrong people making decision on Olympic Games」(へーリー・ウィッケンハイザーが再び警告 間違った人々がオリンピックの可否を決めてはいけない)が、こう伝える。
「アイスホッケー女子の五輪金メダリストでIOCのへーリー・ウィッケンハイザー委員(カナダ)が4月23日、東京五輪の開催可否をIOCではなく医療関係者が決めるべきとの考えを示した。CBSスポーツの取材に対し、安全性と公衆衛生に基づいて医療や保健の専門家が透明性のある判断を下すべきだと述べた」
ウィッケンハイザーさんは現在、大学の医学部で勉強、あと2週間で卒業するという。カナダのカルガリーで新型コロナ患者のケアに携わってきた。ウィッケンハイザーさんは、
「この1年に私が見てきた出来事の後で五輪について考えるのは非常に難しい。私は(患者の)大変な苦しみを目にしてきた。一方で、出場のチャンスをつかもうと何年も練習してきたのに、五輪がパンデミックの時期に当たってしまった選手たちには同情している。中止になろうが開催されようが、そこに勝者はいない。どこも厳しい状況にある」
と語った。だからこそ、ウィッケンハイザーさんは、
「五輪に投資している大企業や放映権を持っているテレビ局ではなく、(中立な)外部の誰かの判断が必要だ。非常に明確で透明性のある説明が求められる。それは医療関係者によってなされるべきだ」
と訴えたのだった。
(福田和郎)