入社1年目の社員が開発した化粧品が、2021年度モンドセレクション最高金賞を受賞した――。
化粧品の通販事業などを手掛けるAceAgent(奈良県大和高田市)は2021年4月12日、そう発表した。
受賞した商品は19年夏に発売したAceAgentのスキンケアブランド「ウツクシア」の「炭酸パック プルリ」。開発したのは、18年秋に入社した今村絢(いまむら・あや)さん(35)だ。
海外コスメを独自で調査
大学卒業後、ずうっと教育関係の仕事をしていた今村さん。異業種からの転職で、AceAgentに入社した。化粧品開発はまったくの未経験だが、中学生の時からお小遣いはコスメに使い、海外ではコスメの市場調査を独自に行うほど、根っからの「化粧品オタク」だ。
大のコスメ好きだという今村さんは、どのようにしてモンドセレクション受賞の商品を生み出したのか。会社ウォッチ編集部は4月19日、今村さんを取材した。
――なぜAceAgentに入社したのでしょうか。
今村絢さん「自分自身、コスメやスキンケアにお金をかけているのですが、ここがもうちょっとこうだったらなって思うことが結構多いんです。それを取り入れて、自分の思う商品を作れたらと思っていたので応募しました」
――発表資料のタイトルにも「化粧品オタク」と書かれていますね。
今村さん「情報は結構集めているほうだと思いますね。海外に行くことが多いので、独自で市場調査を行っています。その国のトレンドや、日本の商品がどう扱われているかなどを見ています。韓国に行くことも多いですね」
――開発はお一人でされたのですか。
今村さん「開発は一人ですが、販売部門の意見も取り入れつつ、商品を作り上げていきました。自分の作りたいモノだけを作るというわけにはいかないのが商品開発なので」
――業種未経験で開発を任された時、どんなお気持ちでしたか。
今村さん「不安はあまりなかったですね。どんなものができるのかなっていうワクワク感が一番大きかったです」
販売部門と協力して開発
今村さんが作った「炭酸パック プルリ」は、ゲルに粉末を混ぜ、スパチュラで顔にのせて固まったらはがすという商品。炭酸パックが固まることで「洗い流す」という手間がなくなる。
固まる炭酸パックは他社でも販売されているが、「炭酸パック プルリ」は、独自の炭酸生成法により、高濃度の炭酸ガスを逃さないようになっているのが特徴だ。
――今回、「炭酸パック」に着目されたきっかけは、なにがあったのでしょう。
今村さん「私は目が悪いのですが、固まらないタイプの炭酸パックをやると、眼鏡をかけられなくなります。何かしたいんですけど、コンタクトを入れるのは面倒くさいし、ジェルが垂れてくるんですよね。それが固まるタイプであれば、ある程度時間がたったら眼鏡をかけて、テレビを見る、家事をするといったことができます。洗顔もしなくていいので、ハードルがかなり下がりますよね」
――開発はどのようにして進めましたか。
今村さん「まずはリサーチを行い、商品の候補をある程度あげました。市場の状況も見つつ、どのくらいの需要があるか、どういった売り方があるかなど、販売部門の社員と協力しながら進めました。入社から程なくして着手して、期間は半年くらいですね」
――試作品はどのくらい作りましたか。
今村さん「『炭酸パック プルリ』のあとに他の商品も開発していますが、この商品に関してはそんなにやらなかったですね。わりと最初から自分の思いどおりのものができたと思っています」
――「炭酸パック プルリ」で、どのような効果が期待できますか。
今村さん「保湿力です。肌の乾燥は皆さん悩んでいると思います。特にコロナ禍はマスクをしているので、より乾燥しやすく、マスクの下は見せられない状態になっていると思います。乾燥はやっぱり深刻な問題なので、これからも保湿に着目した商品を作っていきたいと思っています。
モンドセレクション最高金賞に「もうびっくりですね」
今村さんが初めて開発した「炭酸パック プルリ」は2021年度モンドセレクション最高金賞を受賞。この快挙を今村さんはどう思っているのだろうか。
――モンドセレクション最高金賞を受賞した時の心境を教えてください。
今村さん「もうびっくりですね。化粧品分野での最高金賞は少ないと聞いていたので。エントリーした時は、イケて金賞くらいかなと思っていました」
――どこに受賞の要因があったと思われますか。
今村さん「革新的だったんじゃないでしょうか(笑)成分も結構作り込んでいるので。特許技術ありきで作られている商品なので、そこが評価されたのかもしれないです」
――特許技術は、どの部分になりますか。
今村さん「炭酸を発生させるメカニズムですかね。炭酸は気体なので外に逃げてしまいますが、それをジェルの中にうまく閉じ込めて、ムラなく、持続時間も長く、肌に届けられるようにしています」(編集部注:すでに特許は取得済み)
今のところ、モンドセレクション最高金賞受賞による売り上げへの大きな影響はないというが、「これから見えてくるのでは」と、今村さんは話している。