音声入力でスピードアップ
インプットの方法ばかりではない。情報のアウトプットについて在宅勤務ならではの方法として、「音声入力」を勧めている。本書の最初の原稿も音声入力で書いたそうだ。Wordファイルを開いて、そこに直接しゃべりながら入力する。キーボードで入力する3倍のスピードで入力できるという。
「在宅勤務であれば、周りの人を気にすることなく音声入力をすることができます。これは革命的です」
小山さんが本業のほかにもさまざまな活動をしていることは略歴でもふれた。「自分のいる立ち位置を、より広い場所へと位置づけていく。そのきっかけが在宅勤務なのです」と書いている。そのための動画配信、コンテンツをストックするための「note」の活用、個人のラジオ番組の配信を紹介している。
また公共性のある事業なら一般社団法人という選択肢もあるという。小山さんは3つの一般社団法人の立ち上げにかかわった。その一つが京都府亀岡市での芸術による地域活性化事業を行う法人だ。京都のメンバーとは遠隔(つまり在宅)でプロジェクトを進めているという。
まずは自宅を拠点に無料でスタートするのが新規事業のコツだと書いている。在宅勤務は、会社の枠を超えた人脈を広げるチャンスでもあるのだ。
この手の「ハック」本の中には、テクニックだけを披露して、仕事観、人生観が感じられないものも少なくない。「それで、結局、あなたは何をしているんですか?」と問いたくなるものもある。
小山さんは文房具や発想法などの「ハック」シリーズを実践した結果、一つの会社に縛られるのではなく、いくつもの仕事、活動へと世界を広げてきた。その究極の姿が「在宅勤務」という形で結実した、と思った。
小山さんは、「ポスト・コロナ時代の新しい自分に出会えるはずです」と読者に呼びかけている。(渡辺淳悦)
「在宅HACKS!」
小山龍介著
東洋経済新報社
1650円(税込)