コロナ禍で在宅勤務している人も多いだろう。家族が気になる、ずっと一人でいるとモチベーションが落ちる......。そんなリモートワークに不満を感じている人にオススメしたいのが、本書「在宅HACKS!」だ。「自宅が最強のオフィスに変わる」とうたっている。
超実践的な89のテクニックを披露する「実用書」であると同時に、在宅勤務は単なる働く場所の選択ではなく、「新しいキャリアの選択であり、人生のあり方の選択である」というライフスタイル提案の書でもある。
「在宅HACKS!」(小山龍介著)東洋経済新報社
仕事がはかどる! 大型ワイドディスプレイ、高機能チェア、LED照明
著者の小山龍介さんは、1975年生まれ。京都大学文学部卒。大手広告代理店勤務を経て、米国MBAを取得。その後、松竹株式会社新規事業プロデューサーとして歌舞伎をテーマに新規事業を立ち上げた。2010年、株式会社ブルームコンセプトを設立し、現職。名古屋商科大学大学院准教授(ビジネスモデル論)。その傍ら現在、京都芸術大学博士課程在籍。さらに複数の一般社団法人の理事などを務める。著書に「IDEA HACKS!」(東洋経済新報社)をはじめとする「ハック」シリーズがある。
以前、いくつかの「ハック」シリーズを読んでいたので、小山さんがその後、どうしているか気になっていた。2008年に会社を辞めてから、在宅を中心に仕事、執筆、大学院での教職など複数のキャリアを積み重ねていたようだ。「二足どころではない何足ものわらじを履き分けてきました」「もしひとつの企業に9時から5時まで働いていたら、とても実現できないキャリアです」と書いている。
「在宅勤務は、これまでとは違う、何倍ものアウトプットを実現する新しいキャリアの可能性さえあるのです」
本書は、在宅勤務に潜むリスクをポジティブに転換する、実践的な提案に満ちている。
環境整備、行動管理、コミュニケーション、情報整理、メンタル&ヘルス、副業の6つのパートで構成されている。
本を開くと、「これが究極の在宅勤務デスク」という小山さんの仕事部屋のカラー写真が出てくる。視野を広げて作業効率を高める大型ワイドディスプレイ、疲れを和らげる高機能チェア、動画撮影時に顔を明るく照らすLED照明などに囲まれた快適な環境に、ため息が漏れる。「これなら仕事がはかどりそうだ」と思った。本文でも、詳しく机やいす、照明など、望ましい仕事環境について説明している。
環境が整ったら、いよいよ仕事だ。オン・オフを切り替え、アウトプットを最大化する方法を示している。たとえば、「仕事を始めるルーチンを持つ」「やる気が出ないときはハードルを下げる」「在宅勤務の時間割を作る」「午後3時に締め切りを入れる」などだ。
在宅勤務で一番に懸念されるのが、チーム内のコミュニケーションだ。チームで連携するための方法として「電話連絡はNG」「朝メール・夜メールで進捗共有」「タスクを可視化&共有化して一体感を生み出す」などを提案している。
情報整理に関しては、紙が抱える問題を指摘。法的に紙として残しておかないといけないものを除き、データ化するのが原則、としている。そのために紙を瞬時にデータ化するアプリを紹介している。また、大量の書類はスキャンしてフォルダに放り込む。