金座、銀座は幕府の要だった
全国の主な鉱山は幕府が貨幣の鋳造は、幕府が独占的に行なっていました。全国の主な鉱山は幕府が直轄しており、そこから生じた金銀銅を使って貨幣を鋳造します。幕府はそれだけで巨大な収益がありました。諸藩には貨幣鋳造は許されていません。
また幕府は、財政が悪化すると、たびたび貨幣の改鋳をおこないました。金や銀の含有量を減らした小判などを鋳造するのです。「幕府が大きな権力を保持し続けた基盤はここにある」と、龍馬は掌握していたのです。
大村さんによれば、江戸時代の幕府の収入は25~30%程度が、貨幣鋳造益によるものだったそうです。しかも、幕末には、60%を超えることもありました。
大村さんは、
「金座、銀座を取り上げ、それにつながる鉱山を接収すれば、幕府の財源の大半を握ることができます。それさえできれば、幕府や将軍は残っても、有名無実の存在になる。龍馬は、そういう算段をしたのです」
と解説する。
西郷隆盛、大久保利通、桂小五郎など、歴史に名を残した明治の元勲たちよりも、龍馬の金策は一歩先を行っていました。時代の節目では、今後、何がどうなるかわかりません。さまざまな可能性を考慮し、でも、どうなろうと必要だったのが、「お金」だったのです。本書では知られざる「龍馬の錬金術」が紹介されています。(尾藤克之)