トヨタ自動車は、中国・上海モーターショーの開幕に合わせ、電気自動車(EV)のフルラインアップ化計画、新EVシリーズ「TOYOTA bZ(トヨタ ビーズィー)」を2021年4月19日に明らかにした。
シリーズ第1弾となる「TOYOTA bZ4X(トヨタ ビーズィーフォーエックス)」を披露。計画によると、トヨタは2025年までに15車種のEVを導入し、そのうち7車種が「TOYOTA bZ」モデルとなる。
トヨタはこれまで、主力車種の多くをハイブリッド車(HV)が占め、EVは世界の競合他社から、大きく出遅れていた。それだけに、新シリーズに注目と期待が高まっている
欧米で新車ゼロエミッション強化
いまや世界の自動車市場は、EV抜きでは生き残れない。2016年にノルウェーで「2025年にガソリン車・ディーゼル車の販売禁止」を求める動きが出たのを皮切りに、欧米で新車ゼロエミッション(排気ガスゼロ)化が強まり、それまで以上にEVに取り組む姿勢を強めてきた。
欧米では、ゼロエミッションを実現する「電動車」とは、EVか、電気のみでより長距離走行ができるプラグインハイブリッド(PHEV)だけと定義した。HVはこれから漏れた。
ラインアップの主力をHVに据えて世界の市場をリードしてきたトヨタだが、HV依存ではEVが世界市場のスタンダードとなったときに生き残れない可能性がある。しかも、欧米をはじめ世界の自動車メーカーのEV競争は、米テスラを例にするまでもなく、大きく先行、かつ開発競争が激化しているのだ。
もっともトヨタだってEVめぐって手をこまねいていたわけではない。2010年、米テスラと共同で開発、販売することで合意。トヨタはテスラに5000万ドルを投資した。2012年にトヨタのクロスオーバーSUV、RAV4にテスラのEV技術を搭載した「RAV4 EV」を発売。しかし、価格が通常のRAV4の2倍ということもあり目標の販売台数に達せず、14年に共同プロジェクトは終了した。
その後、トヨタは燃料電池自動車(FCV)へとシフトする姿勢を強めたが、その一方で欧米の自動車メーカーや日本の他のメーカーが、排ガス規制の強化を打ち出している欧州を中心に、2025年あるいは2030年をメドとして掲げ、次々にEVへのシフト計画を発表。トヨタのEVシフトが遅れている印象を与えるようになっていた。
素早いレスポンスと高い走行性能
そうした状況から一気に最前線に飛び出そうと発表されたのが、今回の新EVシリーズ「TOYOTA bZ」計画だ。
「bZ」は、「beyond Zero(ビヨンドゼロ=ゼロを超えて)」の略で、「ゼロエミッション」以上の価値を提供する意味を込めた。トヨタは「中国、米国、欧州などEVの需要や再生可能エネルギーによる電力供給が多い地域で、多くのお客様に受け入れていただけることを目指しているEV」と説明する。
NEWモデル「TOYOTA bZ4X」は、SUBARU(スバル)と共同開発したSUVタイプ。トヨタとスバルが2020年12月に発表した新EV専用プラットフォーム「e-TNGA」を採用。全長はセダンやハッチバック並み(Cセグメント)ながら、より広く価格も高い設定(Dセグメント)の室内空間を実現した。
航空機の操縦桿のようなステアリングが新時代のEVを印象づける。搭載した新AWD(全輪駆動)システムもスバルと共同開発。素早いレスポンスと高い走行性能を実現した。
モーターが動力となると同時に発電機の役割を果たす回生エネルギー技術の活用に加え、停車中も充電を行うなど、EVならではの環境性能をさらに上積みするソーラー充電システムを採用。利用者に不便を感じさせない航続距離を確保するという。
TOYOTA bZシリーズは、スバルのほか、グループ会社のダイハツ工業や資本提携を結んだスズキ、中国のEV大手、BYD(比亜迪)をパートナーとして開発を進める計画。ただ、TOYOTA bZ4Xのスペックなどは発表されていない。
「電気自動車で幸せになる」、「EV時代の夜明け」などの著書があるEVsmartブログの編集長、寄本好則さんは、性能の詳細がわからないため「残念ながら評価しようがない」というが、今回の発表に接して期待が高まったと、こう述べた。
「2025年までにEV15車種という内容があったこと、またアライアンス先としてダイハツやスズキが挙げられていたことから日本市場に向けた画期的な軽や小型EVの登場に期待します。2025年まであと4年ほど。15車種を広範に市販していくためにも、全固体電池はもとより、既存技術で実現可能なリチウムイオン電池量産や改良への朗報を心待ちにしています」