日本企業は人権問題に「後ろ向き」
欧米企業の対応に比べて、日本企業はやや弱腰の姿勢に見えることで、海外から厳しい目が向けられているのも事実だ。フランスでやり玉にあがったファーストリテイリングは、もちろん強制労働を支持しているはずもなく、取引先の企業を調査したとして、問題があれば取引を停止していると表明している。
しかし、柳井正会長兼社長が4月8日の決算発表の記者会見で、「政治的に中立な立場でやっていきたい」とし、新疆問題に関してノーコメントを貫き、明確な批判を避けたことが一部から不信感を呼んでいる。
生活雑貨の「無印良品」を展開する良品計画も4月14日、新疆綿を使った商品を扱っていることについてプレスリリースを公表。新疆に第三者機関を派遣して監査を実施したと説明した。そのうえで「法令や良品計画の行動規範に対する重大な違反は確認していない」とし、新疆の綿製品の販売を継続するとした。ただ、これについても「人権問題に後ろ向き」との声が上がっている。
多くの日本企業が中国を明快に批判しないのは、中国が重要な市場であるからに他ならない。良品計画にとって中国は最重要市場で、2021年2月中間決算で、中国での売上高が403億円と、全体の18%を占める。ファーストリテイリングも、2月末時点の店舗数が国内807店に対して中国800店と肩を並べる水準。流通関係者は「無印もユニクロも、成長の柱である中国市場で締め出されたら影響は計り知れない」と、同情を隠さない。
バイデン米大統領と管義偉首相による4月16日の日米首脳会談でも、協力して中国に対抗していく方針を強く打ち出した。日本企業にとっては地理的にも経済的にもつながりが強い中国との付き合いが、さまざまな形で重大なリスクを抱えているのは確かだ。(ジャーナリスト 済田経夫)