携帯料金値下げ戦争で旋風を巻き起こしたNTTドコモの新料金プラン「ahamo」。20GB(ギガバイト)で月額2970円(税込み)という破格の安さが利用者と他の大手携帯会社に衝撃を与えた。
主に若者を対象にしていることから、契約受付をオンライン限定にしてコストダウンを図ったのだが、2021年4月22日から店頭でも契約受付のサポートを有料で始めるという。
「ウェブは苦手じゃが、ワシだってahamoを使いたいんじゃ!」
というスマートフォンやインターネットに不慣れな中高年層の声に抗しきれなくなったようだ。
J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部は、NTTドコモの広報担当者に聞いた。
「ネットで申し込みを」とお客を追い返すわけには...
NTTドコモの方針転換が明らかになったのは4月16日、総務省が開催した有識者による「競争ルールの検証に関するワーキンググループ」の会合だった。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルなどの事業者がヒアリングされた。
その席で、NTTドコモの担当者が、
「ahamoはメインブランドのプランとして提供するほか、他社に先駆けて発表したことから廉価プランへの移行に大きく貢献した。しかし、オンライン専用プランであるため、料金プランの案内が店頭で行えないし、店頭での申込受付もできない。また、故障時のサポートが提供できていないなどの課題がある」
とする報告書を出した。
また、高齢者などネットに不慣れな利用者から不満が出ており、近く店頭で契約手続きのサポートをすることを発表すると明らかにしていた。
4月21日、NTTドコモの広報担当者に「オンラインでのみの契約受付のシステムを変えたのか?」と聞くと、こう答えた。
「4月22日から店頭でahamoの契約手続きのサポートを始めます。その際、手数料として3300円(税込み)をいただきますが、ウェブでのみ契約を受け付けるという基本は変わりません。ahamoの反響が凄くて、現場のショップではお客様から『アハモとかいうものがあるそうね。どういうものなの?』という問合せがたくさんあります。説明すると、『そっちに入りたい。どうすればいいの?』という人が多いのですが、『ウェブでやってください』と、放っておくわけにいかないじゃないですか。納得されないお客様も多いですし......」
お客が自分のスマホに入力するのを手助け
そこで、正式の申し込み受付のように店員が自分のパソコンで手続きをすませるのではなく、お客のスマホに自分で入力させるスタイルをとる。そして、脇から「そこをクリック」「そこで改行」「そこを押して確認すれば完了です」というふうにサポートするのだという。
だから、ショップで新規契約を受け付けるということではなく、あくまでショップで聞かれたらお手伝いするというスタンスだ。
広報担当者はこう語った。
「だからこのサポートもメディアに大々的に発表するというのではなく、近日中にahamoの公式ホームページに掲載する予定です」
ちなみに、ahamoは3月26日から申し込みが始まっているが、3月下旬現在で約254万人の事前申し込みがあるという。
今回のahamoの「軌道修正」について、ネットではこんな声があふれた。
フリーランスジャーナリストの山口健太氏は、こう指摘する。
「ahamoは店頭対応のコストを省くことで低料金を実現していますが、LCC(格安航空会社)の飛行機も有料の機内食は意外と充実しているように、お金を払えば店頭で対応してもらえるのは、おもしろい試みです。それに加えて、販売現場の事情もありそうです。ドコモショップはahamo人気を利用して集客を図っており、料金相談に訪れるお客で賑わっています。ただ、この調子ではahamoを使い始めた後もショップを訪れ、サポートを求めてくる可能性があります。そこで店頭サポートは有料と明言することで、ショップの混雑を避けたいという意図も感じられます」
やはり、店頭でのサービスは必要だという意見が多かった。
「これは妥当なんじゃないでしょうか。先日、ahamoに切り替えましたが、切り替えが終わった途端にネットに一切繋がらなくなり、かなり焦りました。パソコンで対応方法が調べられたからいいが、何もなかったらショップに駆け込むしかないですからね。電話も通じないし」
「スマホしか持っていない私は、スマホが壊れたらどうしようと思っていました。店頭で有償でも対応してくれるなら、ahamoに替えても安心していられます」
スマホコンシェルジュみたいな新商売も
また、こんな指摘も多かった。
「本来、オンライン契約がコンセプトなので、店頭でのサポートを望むならその分のサービス料金を取るのは当然の話。従来のプランは店頭サービス料金が込みになっているからこその値段だと明確に示せる。店頭での有料サポートを受け付けることで契約機会を少しでも上げることにもつながるので、docomo、ショップ、顧客ともにメリットが大きい」
「ahamoなどはもともとネット上だけで大丈夫な若者向けだから、窓口対応は有料になろうともあまり文句は出ないのでは。こういう若者向けの安いプランを出したのなら、高いプランのほうの学割とか減らして、どの年代でも同じ内容と同じ値段のプランにして欲しい。学生や20代前半がもういない家だって結構あるのよ」
「私は夫、父、義父、義母、娘と息子(まだ未成年)のiPhoneの設定やらahamoへの切り替えやら全部やらされた。正直カネくれよっていうほどの労力だった」
「できない人はできる人(ショップ)に金を出してやってもらえばいいのよ。それがサービス業。本来もらえるはずだった対価を無料で提供し続けてきたのだもの、こういう調べればできることをやらない人からはしっかり取るべき」
また、こういう新ビジネスを考える人もいる。
「ahamoの対面サポート、もしかしたら新しい商売になるかもしれませんね。別にドコモショップだけがそれをやらなければならないわけでもないですし。何なら私が個人的に有償でサポートしましょうか? という人が出てきそう」
「都市部ではとっくにそれを商売にしている人がいるよ。パソコンとかIT機器の設置、設定を代行する仕事。『ほけんの窓口』みたいに、Ahamoだけでなく全キャリアをまたがったスマホコンシェルジュみたいな職種。その人の使い方とかに応じて最適な会社とプランを提案して代行契約してくれる。それほどスマホ契約は高度化しているし、なくてはならないものになってきているからね」
(福田和郎)