尾身茂氏「政治家はリスクと責任を負うべし」
一方、政府側も行き当たりばったりの対策しか考えていないようだ。朝日新聞(4月20日付)「解除50日、3度目宣言へ 止まらぬ人流、追加対策どう」が、こう指摘する。
「前回の緊急事態宣言が全面解除された3月22日。その時点でリバウンドの兆候が見えていた。政権幹部はまん延防止等重点措置でリバウンドを止めたい考えだったが、当初から効果を不安視する声もあった」
それは各種データから、大阪駅や東京などの人出が減らないどころか、逆に増える傾向がみられたからだ。朝日新聞がこう続ける。
「政府が3度目の緊急事態宣言を出す場合に焦点となるのが、どのような業種に休業要請をかけるかだ。大阪府はテーマパークや大型商業施設など幅広い対象を検討。政府も遊技場などを想定。東京都も要請する構えなので、経済への影響を懸念する声が根強い。官邸幹部は『さらなる対策は絶対に経済を傷つける』と頭を抱える。自民党幹部は『休業は大阪だけでやってほしい』。別の党幹部は『一番いいのは学校を休校にすることだ。子どもが自宅にいれば、親もいないといけない。人流を半減できる』と主張する」
と、あれやこれや述べるだけで、明確な根拠に基づいて対策を考えているわけでない。
こんな政治家たちの無責任ぶりに憤りを見せたのが、政府の対策分科会の尾身茂会長だった。朝日新聞(4月20日付)「尾身茂氏インタビュー 大阪支援『オールジャパンで』」の取材に応じて、こう語ったのだ。
「今回のリバウンドは、やはり変異株の問題がある。特に大阪などのスピード感は、変異株が1つ大きな要因だったと思う。東京でも何もしなければ変異株が大阪のようになるのは時間の問題。ここまでくると、感染者が急に減ることはないだろう」
そして、尾身氏は政策を決める政治家のリーダーシップについて、こう糾弾した。
「今は、何百年かに1度の非常事態。まさに社会の危機。選挙で選ばれたリーダーたちは、今まで以上の説明と実行力が求められている。人々はリーダーを見ている。リーダーはリスクと責任をとる必要がある」
と語った。
そして、朝日新聞記者が「東京五輪は医療現場からも開催を不安視する声が上がっているが」と聞くと、こう答えた。
「私は判断する立場にない。(しかし)一般医療に負担がかかっている状況はよくない。感染を下火にすることに注力するべきだ」
と事実上、中止すべきだと語ったのだった。
(福田和郎)