「数百年に1度の非常事態が起こっているのに!」
変異ウイルスが爆発的に猛威を振るっている大阪府の吉村洋文知事は2021年4月20日、3度目の緊急事態宣言の発出を政府に要請した。同じく変異ウイルスが急拡大している東京都と兵庫県も宣言を要請する構えだ。
いったい、なぜ「第4波」を止められなかったのか。
政府分科会の尾身茂会長は、
「政治家はリスクと責任を負うべきだ。国民は非常時の政治リーダーの言動を見ている」
と憤る。
政治リーダーたちのふるまいを、主要メディアの報道から探ると――。
「五輪中止」を発言した岩手と山梨知事
ところで、大阪府や東京都、兵庫県を3度目の緊急事態宣言に追い込もうとしている変異ウイルスはどういうものか。
毎日新聞(4月20日付)「東京も変異株増、休業要請視野に」によると、感染力が強い変異株の「N501Y」は1人が何人に感染させるかを示す「実効再生産数」が従来株の1.43倍~1.9倍もある。都の検査では4月12日からの1週間で「N501Y」が前週の約3倍の勢いで増加しているという。
それとは別のタイプの変異株が東京に広がっているから厄介だ。東京新聞(4月20日付)「都内の変異株の4割 国の対象外のE484K高止まり」が、こう伝える。
「都内に広がっている変異株は、関西で急増している英国型の変異『N501Y』がなく、『E484K』と呼ばれる変異を持つ。従来株より免疫やワクチンの効果を低下させる可能性があるのが特徴で、由来国は不明だ。政府は、N501Yほどの感染力は認められないとして、E484Kをスクリーニングの対象にせず、検査をN501Yに限定している」
この変異株が「二種類の検査は手間と時間がかかる」ことを理由に検査を怠る政府の網の目をすりぬけてどんどん広がっているのだ。都の独自検査では4月上旬は変異株のうちの42%を占め、最も割合が高くなった。
大阪で猛威を振るっているタイプと違う、ワクチンが効きにくいとされる新たな変異株が広がっている東京都のお膝元でオリンピックを開いて大丈夫なのか。二階俊博・自民党幹事長だけでなく、各地の知事から「中止」の声が上がり始めた。
共同通信によると、4月16日、達増(たっそ)拓也・岩手県知事が定例会見で、東京五輪・パラリンピックについて、
「東京も今の大阪と同じような増え方となり、日本全体で急上昇すれば、中止という選択肢が非常に現実的になると思う」
と述べた。
さらに4月19日付の共同通信によると、山梨県の長崎幸太郎知事も臨時記者会見でこう述べた。
「二階事長の発言は極めて常識的だ。五輪のほうが命より大切というのはあり得ない。感染状況が深刻ならやっている場合ではないでしょう」
「東京に来るな。でも五輪はやります」ってアリ?
3度目の緊急事態宣言について、ネット上ではこんな声があふれている。日本総合研究所調査部マクロ経済研究センター所長の石川智久氏は、こう指摘した。
「3度目となると、これまで頑張ってきた分、大阪の人々もえん戦気分となるのは仕方がないこと。3度目の宣言が効果を出すためには、やはり納得感のある対応策を示すべきです。全国から看護師さんが応援に駆け付けるというニュースもありましたが、こうした目に見える対応を示すことが重要。また困っている人に対して平等な手当てを行うべきです。自粛要請が簡単に依頼されるのが気になります。自粛は、年金生活者、テレワーカーのように自粛で所得が減らない人々、資産家のように余裕がある人しかできない行為です。一律自粛・大幅自粛は極力さけるべきだ、もし実施するのなら、自粛した人々に徹底的な経済的援助を行うべきです」
緊急事態宣言を出して人出を抑えようとしながら、東京五輪をやろうとする政府に憤りの声が殺到している。
「もう国民の大半が『緊急事態宣言、ナンボのもんじゃ!』って感じだ。特に東京はひどい。東京に来るな。でもオリンピックはやります、じゃ矛盾しているんだよ!もう医療従事者の方々も投げ出していいと思うよ」
「緊急事態宣言で呼びかけられても、響いてこないし、協力できない。まず、聖火リレーとオリンピックをやめると宣言してくれ。話はそれから」
「まん延ナントカいう『出しても意味ない』と思われるようなものを今まで出してきたからです。『緊急事態』という言葉の重みがまったくなくなったのが残念です。現状、『緊急事態宣言』が最終手段ならば、それに見合った本当に『強い措置』をやって欲しいです。所々に抜け道、骨抜きがあるような中途半端なものならいりません。効果もなく、ただただ不便を強いられる期間がズルズルと長引くだけですから」
「みんな平気で自分と関係のない所は全部休業にしろと言うよね。家で子供を見られる人は休校にしろという。ライブや観劇・スポーツ観戦と無縁の人はそんなの不要不急だという。外食しないし飲みにも行かない自分は飲食店を全部休業にしろよと思う。でも、子供を見ていられない人は休校が死活問題。イベント系の人は、それぞれが対策しつつクラスターを出していないのに十把ひとからげで休業にされる。ほとんどの人はちゃんと対策をしているのに、一部の無防備などうしようもない人間がいるせいで、こんなことがいつまで続くの。そろそろ別の対策を考えたほうがいい」
「緊急事態宣言が出ると、仕事がなくなる職種で働いています。1回目は何とか乗り越えました。その後も耐え続けて回復し始めた頃です。今年もGW完全閉鎖されるともうもちません。一時金を貰ったところで、宣言明けに出社する会社がなくなれば何ともなりません。正直、昼間だからって平気な顔してカラオケ店のオープン待ちで密な行列作っている年金受給者たちが憎いです。息抜きするなとは言いませんが、もう少し対策しましょうよ」
(福田和郎)