サポート役で「本領」を発揮し、MVP営業マンに
営業担当者は月末になると目標達成のため、営業先にメールを送って交渉の余地があるかどうかを探る。返信があれば、具体的な商談に持ち込んで契約成立を図る。
月末のたびに名刺を取り出してはメールを書いて発信するアナログな作業を繰り返す営業担当者をみて、菊池さんは「メールを送って売り上げになるなら、毎週やればいいのではないか」と助言したが、その手間から「毎週は無理」と、軽くあしらわれた。
当時、メルマガ担当でもあった菊池さんは、それならメールアドレスを預けてくれれば、データベースを作って定期的に営業文書を自動送信すると進言。実行に移した。
自動発信の営業メールに、ぼちぼち返信が届くようになり、これが新たな営業の仕組みに成長する。営業担当者らに、「この会社からは今月中には絶対に受注できない」という取引先の名刺を出してもらうと、ポツリと数件ほどの返信があった。
ところが、返信を寄せた会社はどこも難攻不落とされていたところばかり。しかも、具体的に交渉が進むといずれも受注に成功。これが社内で大いに見直された。
自信を持った菊池さんは、このシステムを使えば、営業の一人としても十分に会社に貢献できると考え、「メールを使った方法だけで、営業職一人分の成績を上げてみせる」と宣言する。「当時の役員には鼻で笑われたが、自分には算段があった。(社内で蓄積された)名刺の数と返信率、営業成功率などから計算して絶対イケますからとトライした」。
3か月後、宣言どおりに目標の四半期売り上げで1500万円をクリア。この目標額は前期比の10倍だ。さすがに役員も見る目が変わり、いつのまにか心強い味方になった。
次の四半期。自らを鼓舞する思いを込めて、目標は2倍の3000万円にハードルを上げた。「初めて認めてもらった」という思いの発露でもあった。そして、通期で1億円超の売り上げをたたき出し、年間MVPをゲットした。