「泥のように働いた」新人時代
「第1章 仕事・読書・人が自分を磨く」は、駆け出し時代のことから始まる。入社して最初に配属されたのは油脂部の大豆担当だった。大豆問屋の紹介で、早朝から豆腐屋に行き、豆腐や油揚げの作り方を習い、問屋から豆の見分け方を教えてもらったという。入社6年目にニューヨークに赴任。土日も昼夜もなく、大豆の売買をする毎日だった。「泥のように働く」ことで、「誰にも負けない」という自負心が底力になったそうだ。
ここが、他の人との違いだと思ったのは、丹羽さんは大豆をはじめとする食料分野のプロフェッショナルになろうと努力したことだ。農業に限らず、アメリカの産業、歴史、政治、文化などに関する本を片っぱしから買い込んで読むようにした。
依頼があれば、「国際食糧事情」といったテーマで講演し、新聞や雑誌に寄稿した。帰国後、油脂原料第一課長になった。38歳、社内では最年少課長だった。この後もメディアへの寄稿を続け、翻訳出版もした。
多忙を極めたが、週3冊のペースで本を読んだ。ただ読むだけではなく、読書ノートをつけ、重要な箇所は書き写した。スペシャリストになる一方で、読書を通じて幅を広げた。
「一つの仕事を極めれば、他の分野にも応用できる。優れたスペシャリストこそ優れたジェネラリストになれる、というのが私の基本的な考えです」
この後の章では課長時代、部長時代の成功と失敗談が続く。そこからいくつかの教訓を導いている。日本の企業の特徴はチーム経営だ。部長が部員たちの心と心をつなぐことで、仕事の達成感や喜びを共有するようになる。そのために部長は部下に「夢とビジョン」を語る必要があるという。「認めて任せて褒めれば人材は育つ」「優秀な社員ほど厳しい職場に送り込む」などの言葉が並ぶ。