本の読み方にもいろいろある
学びの基本である、本の読み方にもいろいろあることを知り、驚いた。知らずに使っている最速の読書法「転読」、必要なものだけを読み取る「掬読(きくどく)」、文献と対話する「間読」、決まった時間で読み終える「限読」、ここまでがいわゆる「速読」だ。
ふつうの速度で読む「平読」には、「黙読」、「音読」、「指読」があり、時間をかけてじっくり読む「精読」には、「刻読」や「段落要約」、「筆写」、「注釈」などがあるという。
この読書法のところで、ハタと思うところがあった。読みながら、必要なところに「しるし」を残していくのが「刻読」の一つの行為である。その効果について著者は、こう書いている。
「しかし、刻読は学習法以上のものである。というのも、テキストを読み、気になるところに線を引き、線を引いた箇所について考え、コメントを残すことは、およそあらゆる思考術に共通する基盤とも言うべき作業であるからだ」
そこからもう一歩進むと、抜き書きになる。「抜き書きノートは、あなたの生きた知的財産となる」と書いている。
評者も本にたくさんの付箋を付け、必要な箇所を引用しながら原稿を書いている。原稿を書く以前の読書と言えば、ただ本を読むのに終わり、すぐに内容を忘れることが多かったが、原稿を書くことにより、紹介した本の内容だけでなく、本相互の関係なども頭に残るようになった。
原稿を書かずとも、抜き書きを作るだけで自分専用のデータベースが作れるだろう。
時間の使い方や読書法を書いた本なら、これまでもいろいろあった。本書が支持を集めた理由は、脚注に登場する多くの先人たちの存在だろう。孔子、橋本左内、アンリ・ポアンカレ、ミルトン・エリクソン、親鸞、林達夫、川喜田二郎、レイ・ブラッドベリ......。彼らの知恵が、本書の記述の下支えになっているかと思えば、有難みもあるというものだ。