新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、心身の不調を訴える声が一段と増している。
医薬品メーカー、ツムラが働き盛りや子育て中の若い世代を対象に実施したアンケート調査によれば、「2021年に不調を感じそう」と答えた人は全体の約6割にのぼり、「2020年に不調を感じた」という人を上回った。
オンライン会議やテレワークは急拡大しており、体調管理は差し迫った社会的課題になっている。
当面はテレワークの拡大が続く......
ツムラが全国の20~40代の男女1800人を対象に、インターネットで実施した「不調」に関する調査(2020年11月)によると、コロナ禍に見舞われた2020年に実際に「不調を感じた」と答えた人は、全体で57.2%に達した。
男女別では、男性が50.2%だったのに対して、女性は64.2%と、3分の2近くにのぼった。不調の症状としては、「目の疲れ」(63.7%)、「疲れ・だるさ」(60.1%)、「肩こり」(59.6%)が多かった。
一方、21年に「不調を感じそう」と答えた人は全体の59.5%にのぼり、男性が52.8%、女性は66.2%だった。男女ともに今年の不調を予感する人の割合は、前年に「不調を感じた」と答えた人の割合より大きく、心身の調子の先行きを不安視する人が増加していることがわかった。
予想される症状は、やはり「目の疲れ」がトップで59.8%。次いで「肩こり」(56.3%)、「疲れ・だるさ」(55.4%)だった。「目の疲れ」や「肩こり」は、テレワークなどの普及でパソコンやスマートフォンを使う時間が長くなっていることが大きな要因とされるが、当面、テレワークは拡大が見込まれることから、ツムラは「不調傾向は続くかもしれない」とみている。
求められるテレワークの適正運用
こうした心身の不調は、業務の効率を下げるという警戒感も強まってきている。第一三共ヘルスケアは、テレワークを導入した企業に勤務する全国の20~50代の男女700人に対して実施した調査結果を昨秋、公表。それによると、労働時間についてはテレワークを導入する前と比べて「変化はない」(52.0%)、「少し減少した」(19.1%)、「減少した」(6.3%)との結果で、約8割が長くなったわけではなかった。
それにも関わらず、テレワークによって「何らかの不調がある」と答えた人は65.4%にものぼった。また、「肩や腰などの痛み」があるという362人のうち、「業務効率の低下につながった」と答えた人は4割強にのぼり、第一三共ヘルスケアは「肩や腰の不調が仕事のパフォーマンス低下に影響を及ぼしていることがうかがえる」と分析している。
テレワークは多くの企業で定着しており、コロナ禍が終息した後も引き続き拡大こそすれ、減る可能性は低い。厚生労働省もガイドラインを公開しているが、各企業にとっては業務の効率化という視点からも、テレワークの適切な運用が求められる。(ジャーナリスト 済田経夫)