コロナ禍の影響を受けてテレワークが今や当たり前となりました。今まで以上にメールの回数が増え、イヤでも時間を割かなくてはなりません。
しかし、対面して直接指示を出せないことから、「伸び悩む部下」「動かない部下」「組織になじまない部下」が増えてくることが予想されています。
「テレワークで人を動かすリーダーのメール術」(吉田幸弘著)秀和システム
お手すきのときにと書いてはいけない
私たちがよく使う「お手すきに」という表現があります。一見、相手に気をつかっているように見えますから相手の心証も悪くはありません。しかし、ビジネスシーンでは注意しなくてはいけないと、著者の吉田幸弘さんは言います。
「言葉どおり、『返信するのはいつでもいい』と思われる可能性があります。次のようにクッション言葉を使い、その後に期限を人れるといいでしょう。『(1)入力を手伝ってください』『(2)入力を手伝っていただいてもよろしいですか?』を比較した場合、どちらのほうが快く引き受けられるでしょうか。多くの方が(2)ではないかと思います。(1)は相手からの命令なので選択権がないのに対し、(2)は自分に選択権があります」
「人は、一方的に決めつけられ、自分に選択権がないことを嫌います。ですから、相手には疑問形にしてメールを送りましょう。『26日の12時までに返信いただいてもよろしいですか?』。このようにすればいいのです」
ちょっとしたメールに気がついたら、かなりの時間を割いていたなんてことはありませんか。そうならないためにもムダなやり取りを控えなくてはいけません。
吉田さんは、
「『お任せします』と言われた後のやり取りです。社内イベントの会場を決める際、上司に次のように聞かれたとしましょう。『そうだな。パーティールームで、そこそこ新しい見た目ならいいかな。場所は任せたよ』。このように聞かれたら、おうかがいしてはいけません。『任せる』と言われた後のやり取りは、できるだけ少なくするべきです」
と言います。
「私自身、原稿の締め切りが近くなり、机にかじりついているときに『ご執筆の進捗状況を教えてください』などといったメールが来ると、負担に感じることがあります。いまのケースなら、『任せる』と言われたら、もう『こちらのお店で予約しました』という報告が無難でしょう」
日程調整はゆるやかなアプローチで
日程調整をメールでやり取りする際、何の限定もなく、「いつがよろしいですか」と聞かれても、漠然としすぎて決めようがありません。多忙なときや無理して約束を設定する必要のない相手だと、なおさら返信に困ってしまいます。
一方で「来週の水曜日の14時~16時でいかがでしょうか」と、いきなり日時を指定されても唐突な感じがします。デリカシーのない人物と思われても仕方がありません。気遣いができる人は、まずゆるやかな期限を指定します。この後に、「ご都合のいい日はございますか?」と続いたら、スケジュールを確認する気にもなるでしょう。
筆者の経験からいうと、「月初めでいかがですか」「週明けでいかがですか」と、範囲を狭めてアプローチすると、忙しい人との日程調整もスムーズに進みます。曜日や時間を確定させないにしても、ゆるやかで狭まれたアプローチは受け入れられやすいのです。
リモートが浸透したことで、相手との関係性が変化しつつあります。トークで相手を説得するのではなく、「書く力」の重要性が問われてきています。
本書には、リモートで必要とされるメールテクニックが網羅されています。新入社員の方は読んでおいたい一冊です。(尾藤克之)