小池都知事「叱咤激励のメッセージです」
二階氏発言の衝撃が、瞬く間に政界と大会関係者に広がった。
小池百合子都知事は、記者団に聞かれて、
「それ(中止)も選択肢だという発言だったと聞いている。叱咤激励、ここはコロナを抑えていきましょうというメッセージだと受け止めている」
と話した。
丸川珠代五輪相も、
「文脈から『しっかりと準備し、予断を持って臨むのではなく、きちんと柔軟に対応しなさい』という指示だと理解しています」
と述べた。
橋本聖子・組織委会長も、
「二階先生は心配のお気持ちだと思う。身の引き締まる思いで発言を聞かせていただいた。安心安全な舞台をつくるのが責務です」
と述べて、みんな一様に「中止」には触れなかったのだ。
二階氏は同日午後、あまりに反響が大きかったせいか、報道陣にファクスで釈明文書を送った。
「自民党として安全、安心な開催に向け、しっかり支えていくことには変わりはない」
と説明しつつ、
「何が何でも開催するのかと問われれば、それは違うという意味で発言した」
と書き、「中止」の可能性をまったく否定しなかった。
一方、政府対策分科会の協議を終えたばかりの尾身茂会長は、五輪開催の是非を問う報道陣に次のように語った。
「五輪開催についてはわれわれ分科会、諮問委員会、(厚生労働省の)アドバイザリーボードでも意見を求められていない。だから二階幹事長の考えが良い悪いというべきでない。五輪とは関係なしに、今の東京は重点措置を成功させないといけない。大阪は最初のラインを超えてしまった。東京はこういうことに絶対させてはいけません」
二階氏といえば、菅義偉首相の「後見人」であり、小池百合子都知事にも近い、老練極まりない政治家である。いったい、どんな狙いがあって「中止発言」をしたのか。ほとんどのメディアが「うっかり失言した」とは思っていない。
毎日新聞(4月16日)「『五輪中止』火消しに躍起 二階氏タブー言及」は発言の背景について、こう説明する。
「日本の大会関係者にとって『中止』は最も恐れる事態だ。新型コロナの感染状況が悪化しても政府や組織委は『開催ありき』の姿勢を崩さなかった。二階氏はすぐに釈明コメントを発表し、『何が何でも開催するのか、と問われればそれは違う』と説明した。しかし、『何が何でも開催する』という姿勢を貫いてきたのはIOCだ。『人類がコロナに打ち勝った証し』と繰り返し、開催に向けて突き進んできた」
二階氏はその誰も言えなかった「IOCのタブー」に挑戦したのかもしれない。だからこそ、二階氏の真意と狙いをめぐり大会関係者は戸惑っている。そして悲壮な覚悟でこう語るのだった。
「大会関係者の間で『中止』という言葉はタブーのはずだった。大会関係者は『中止となったら菅政権が持たない。投じた費用が無駄になるくらいなら突き進むしかない』と話した」
(福田和郎)