英エリザベス女王の夫、エディンバラ公フィリップ殿下の葬儀に、王室から離脱した孫のハリー王子が参列するとあって、世界中のメディアがザワついています。
つい先日、英王室で「人種差別があった」などと告発した衝撃インタビューの余韻がくすぶるなか、果たしてハリー王子とロイヤルファミリーの仲は修復できるのでしょうか?
第2子を妊娠中のメーガン妃を米国に残し、単身で英国に帰国したハリー王子を待ち構えていたのは......。
「たった30人の身内」に選ばれたハリー王子
99歳で亡くなった故フィリップ殿下の葬儀は、ロンドン西郊ウィンザー城内で、国葬ではなく、近親者らごく少人数の参列者のもとに営まれることになりました。
通常であれば、国内外の要人ら数百人の参列を見込むそうですが、英国では新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、一般的に葬儀への参列者を30人以内と定めており、王室もこの規則に従った形になります。
参列者がたった30人という「厳選メンバー」に絞られたため、ボリス・ジョンソン首相や、ウイリアム王子とキャサリン妃の3人の子どもたちも「参列を見送る」という事態に。そんななか、英王室の公務から離れて米国に暮らす孫のハリー王子が、無事「厳選メンバー」の待遇を得て葬儀に参列できることになり、その一挙手一投足に注目が集まっています。
妻のメーガン妃は妊娠中のため、医師の助言に基づき参列しないことに。単身で米カリフォルニアからロンドンに帰ってきたハリー王子でしたが、プライベートジェットではなく一般の航空機で帰国した王子を待ち構えていたのは、新型コロナウイルスの「洗礼」でした。
Prince Harry must self-isolate for five days
(ハリー王子は5日間「自主隔離」しないといけない)
Prince Harry Is in Quarantine at Frogmore Cottage Ahead of Prince Philip's Funeral
(フィリップ殿下の葬儀に向けて、ハリー王子はフログモアコテージで隔離中だ)
self-isolate:自主隔離
quarantine:隔離
元王室メンバーといえども特別対応とはならないようで、ハリー王子も一般の海外からの渡航客と同じ扱いを受けているようです。政府のルールに従って、まずは5日間の「自主隔離」生活に入ったハリー王子。現地メディアによると、隔離の場所としてロンドンではなく郊外の「元自宅」を選んだ理由は、「よりプライバシーを守れる環境だから」だそう。
確かに、ハリー王子にとっては、メディアに追われることもなく、他のロイヤルファミリーと顔を合わせることもなく、ゆったりと隔離生活を送れる郊外での「quarantine」は、あらゆる面でメリットがある「一石二鳥」の選択のようです。
「単身帰国」の今がチャンス! あの笑顔をもう一度見たい
ハリー王子と言えば、メーガン妃と一緒に出演したテレビインタビューで、英国王室を痛烈に批判したばかり。その他にも、折に触れて父親のチャールズ皇太子や兄のウイリアム王子に対する不満や苛立ちも口にしていたことから、ロイヤルファミリーでの確執は「もはや修復不可能なレベルか!」と話題になっていました。
現時メディアによると、「自主隔離」中のハリー王子は、エリザベス女王はもちろん、チャールズ皇太子やウイリアム王子に会うこともないまま、葬儀当日を迎えるようです。今回のフィリップ殿下の葬儀の様子はテレビ中継されることから、久しぶりの「再会シーン」がどう展開するのか、に世界中の注目が集まっています。
フィリップ殿下の死去は、英国内にとても大きなインパクトを与えました。メディアは連日追悼記事を掲載し、殿下ゆかりの地には、国民からの献花やメッセージカードが絶えることがありません。いつもは辛辣な批判を繰り広げる英メディアも、ハリー王子の「単身帰国」を次のように報じています。
Harry 'arrives in UK', and 'shutters come up'
(ハリー王子が英国に帰ってきた、そして戸が開かれる)
Prince Harry's reunion at Philip's funeral could 'start process to heal rift'
(ハリー王子がフィリップ殿下の葬儀で家族に再会することは、亀裂を修復する第一歩だ)
rift:亀裂、裂け目、不仲
ハリー王子の王室離脱をきっかけに、誰の目にも明らかになってしまった英ロイヤルファミリーの「rift(亀裂)」。一方、どんどん深まる亀裂と反比例するように、現地の新聞や雑誌、テレビやウエブサイトなどのメディアは、どれも故フィリップ殿下を囲んで笑顔いっぱいのウイリアム王子やハリー王子らの写真で埋め尽くされています。
「あ~、こんな笑顔をもう一度見たい!」コロナ禍で心がギスギスしてしまいがちな今こそ、人々は心の底からロイヤルファミリーの「復縁」を望んでいるのではないでしょうか?
とりわけ、かつては仲の良さ知られていた兄のウイリアム王子との再会に、「メーガン妃がいないうちに仲直りして!」と期待する声が広がっています。
英メディアによると、故フィリップ殿下にあてた追悼メッセージで、「一生を奉仕に捧げた祖父」を称えて「その仕事を引き継いでいく」と責任感を表にしたウイリアム王子と、「祖父はバーベキューの職人で冗談の達人だった」とユーモラスに追悼したハリー王子。まったく正反対の個性を持つ二人は、果たして以前の仲良し兄弟に戻れるのか......。
葬儀での一挙手一投足から目が離せません。
それでは、「今週のニュースな英語」は「rift」(亀裂・不仲)を使った表現を取り上げます。
「亀裂を回復する」は、「heal(癒やす)」を使って表現します。
Prince Philip's Funeral will heal the rift between Prince Harry and Prince William
(フィリップ殿下の葬儀は、ハリー王子とウイリアム王子の不仲を修復するだろう)
President Biden will heal a rift between two countries
(バイデン大統領は、二国間の亀裂を修復するだろう)
逆に、「亀裂を生じる」は「cause(生じる)」を使います。
His statement has caused a rift between us
(彼の発言で、私たちの間に亀裂が生じている)
よりによってフィリップ殿下の入院中に、メーガン妃との「爆弾インタビュー」が放映されたことで、家族間に決定的な亀裂が生じたと報じられているハリー王子。それでも、まだまだ英国民は見捨てていません!亡くなったおじいさんのためにも、ぜひ、笑顔あふれる家族関係を取り戻してください!(井津川倫子)