産経新聞の記事「韓国なんかに」が火に油を注ぐ
韓国国民のあいだでも、日本産の水産物に対する不買運動が広がりそうだ。韓国メディアがさっそく大手スーパーを取材すると、意外な反応が返ってきた。聯合ニュース(4月13日付)「韓国小売り大手 日本産水産物『10年前から扱わず、今後も売らない』」が、こう伝える。
「イーマートやロッテマートなどの韓国の大手スーパーでは2011年に福島第1原発事故が発生して以降、放射能汚染への懸念が高まったことを受け、日本産の水産物を販売していない。ロッテ百貨店や新世界百貨店など大手デパートでも同様で、今後も扱わないと明言した。原発事故以前は、タチウオ、スケソウダラ、タイ、サンマ、ホタテなど国内で消費が多い水産物の多くが日本産だった。
しかし、今後も日本産の水産物を販売する可能性はないと説明。大型スーパーでは、政府が実施している輸入水産物の放射能検査とは別に、独自に検査を行っている。日本政府が汚染水の海洋放出を決定したことを受け、検査をさらに強化する方針であることがわかった」
韓国内でも特に激怒しているのが、日本海に近い済州道(チェジュド)の水産業界の人々だ。ハンギョレ新聞(4月14日付)「済州の水産業界『日本の汚染水海洋放出決定を糾弾』... 集会を予告」が、抗議運動をこう報じる。
「韓日海峡と隣接した済州道の水産業界が集団行動を予告するなど、糾弾の声が高まっている。済州道漁船主協会や済州市漁船主協会などは4月16日、済州市の日本総領事館前で、汚染水の海洋放出決定を糾弾し撤回を求める集団行動に入る。これと共に、済州道内のさまざまな水産関連団体や機関による糾弾が相次ぐ見込みだ。
ウォン・ヒリョン済州道知事も4月14日、国会で記者会見を開き、『海を共有した隣国と国民に対する暴挙であり、厳重に糾弾する。韓国の緊急かつ正当な要請にもかかわらず、日本政府が一方的に海洋放出を行った場合は、法的対応に入る』と警告した。ウォン知事はこれと共に、『済州をはじめとする釜山や慶尚南道、蔚山、全羅南道の5つの地方自治体が汚染水阻止対策委員会を構成し、強力かつ効果的な対応を始める』と明らかにした」
再び、「反日運動」が激化するのだろうか。こうした韓国内の怒りに火に油を注いだのが日本の産経新聞の報道だった。中央日報(4月15日付)「日本政府高官、汚染水放出批判に『韓国なんかには言われたくない』」が、こう伝える。
「日本政府高官が汚染水海洋放出の決定に関連し、『中国や韓国なんかには言われたくない」という趣旨の発言をしていたと、4月14日、産経新聞が伝えた。加藤勝信官房長官が13日の記者会見で「中国、韓国を含む外国政府、国際社会に理解を得ていくよう努めていくことは大変重要だ」と述べた発言を紹介した際に、別の高位官僚が「中国や韓国なんかには言われたくない」と憤慨したと報じたのだ。
これは、産経新聞(4月14日付)の「政府、中韓の懸念に反論」という見出しの記事にある政府高官の発言だ。「中国、韓国も含む世界中の原子力施設で、トリチウムが含まれる液体廃棄物を放出しているではないか」という文脈の中での政府高官の憤りだった。
また、与党公明党の山口那津男代表は記者会見で、韓国と中国の批判に対し、「科学的根拠に基づいたものとは言えない。感情的で他の思惑が絡まった主張は受け入れがたい」と発言したことや、麻生太郎財務相が「飲んでも何てことはないそうだ」と話したことなどが伝えられ、韓国のネット上でも怒りを買っているのだった。
(福田和郎)