百貨店の大丸や松坂屋、商業施設のパルコなどを展開するJ.フロントリテイリングは、2021年2月期決算(連結)の最終利益が261億9300万円の赤字だったと、4月13日に発表した。最終赤字は、大丸と松坂屋ホールディングスが経営統合して東京証券取引所市場第1部に上場した2007年以来初めて。
新型コロナウイルスの感染拡大が大きく影響した。他の大手百貨店の決算でも赤字の報告が相次いでいる。
心斎橋パルコはリニューアルで好調
J.フロントリテイリングの「2021年2月期 業績説明資料」によると、小売業の売上高に相当する総額売上高は7662億9700万円で前期比32.4%減と落ち込んだ。営業利益は242億6500万円の赤字。前期は402億8600万円の黒字だった。最終利益は261億9300万円の赤字。前期は212億5100万円の黒字だった。
「セグメント情報」によると、大丸と松坂屋による主力の百貨店事業は総額売上高4672億800万円で、前期比34.7%減。最初の緊急事態宣言があった2020年4、5月の第1四半期で、対前年同期比64.9%減と大幅に落ち込んだことが通期で響いた。
第3、第4四半期の後半に回復傾向になったが、感染拡大の第3波に見舞われ足踏み。1年を通して新型コロナウイルスの影響で来店客数の減少や訪日外国人の免税売上の落ち込みに悩まされた。
とくに免税売上高は、大丸、松坂屋各店で前期比82.0~99.3%減。全店を通して同96.1%減とほぼ消失する結果になった。パルコ事業の総額売上高は2065億1900万円で、同33.6%減。その中でも、2020年11月に大阪市中央区の大丸心斎橋店北館をリニューアルして誕生した「心斎橋パルコ」は、大丸とつながったことでお客の回流がよくなり、好調で想定を上回る売り上げだった。
J.フロントリテイリングの好本達也社長は、20年10月の第2四半期の決算説明会で、緊急事態宣言で休業を余儀なくされ損失が増したことに触れ「百貨店もパルコもリアル店舗が開店した状態を前提に組み立てられたビジネス構造が問題。リアル店舗の強みはその根幹から見直しを求められている」と分析。DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入などで成長軌道への復帰を目指すと話した。
2022年2月期の業績予想によると、総額売上高は1兆50億円(前期比30.6%増)、営業利益は110億円の黒字、最終利益は40億円の黒字を計画。中核の百貨店事業については、国内富裕層が全体をけん引するなか、月を追って着実な回復に向かうと見込んでいる。