汚染水の海洋放出に歩調を合わせるように......
議員連盟の初会合後、稲田朋美会長は原子力発電について、「安全性がもちろん一番大事だ。新しい安全性の技術を備えた新原発炉のリプレースが重要」と述べ、さらに「グリーン成長戦略」に盛り込まれている「(原子力発電ついて)可能な限り依存度を低減しつつ」という文言も削除すべきとの考えを示している。
安倍晋三前首相も「国力を維持しながら、安定的な電力を供給する政策を考えるうえで、原子力としっかり向き合わなければならないのは厳然たる事実だ」と指摘した。
この議員連盟、あたかも安倍政権の復活がイメージされるような、当時のメンバーが顔を揃えており、安倍政権が推進した原子力政策を再現するように見える。安倍政権下では、原子力政策の所管である経済産業省出身の今井尚哉首相補佐官が、安倍首相の信任厚かったことで積極的な原子力政策が進められた。
一方で、東日本大震災で水素爆発などを起こした東京電力・福島第一原子力発電所の事故処理は遅々として進まず、国内の原発再稼動は事実上、不可能となっていた。
ところが、東電福島第一原発の処理済み汚染水の海洋放出の実現性が急浮上した。これと歩調を合わせるように、4月12日に自民党の「脱炭素社会実現と国力維持・向上のための最新型原子力リプレース推進議員連盟」が設立され、翌13日に政府は処理済み汚染水の海洋放出を閣議決定した。
これらの動きは、あたかも原発再稼動、建て替え、新たな増設を後押しするような動きに映る。議員連盟の設立は、政府が進めようとしている政策の「布石」でもある。たとえばカジノ解禁に向けて、国際観光産業振興議員連盟(IR議連)が設立され、大きな役割を果たした。
今回の「脱炭素社会実現と国力維持・向上のための最新型原子力リプレース推進議員連盟」の設立により、政府はCO2ゼロ達成をお題目に、原発政策を加速する可能性が大きい。(鷲尾香一)