希望すれば週3日の休みが撮れる仕組み「選択的週休3日制」について、政府が導入に向けた検討を始めた。
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、テレワークや時差出勤などが急増するなか、多様な働き方を広げようという狙いだ。ただ、週休3日制によって給与が大幅に減少するのではないか、などといった懸念も多く、慎重な議論が求められそうだ。
休みを増やして観光業を支援
「育児や介護、闘病など生活と仕事の両立を図る観点からも、多様な働き方を推進することは重要だ」
加藤勝信官房長官は2021年4月5日の記者会見で、選択的週休3日制の導入に積極的な姿勢を見せた。コロナ禍によって、さまざまな働き方が始まったことをきっかけに、仕事と生活のバランスが取れた生き方を広げようという目的だ。同時に、労働力不足という深刻な問題の解消につなげたいという思惑があるともみられている。
実際、選択的週休3日制が広く認められるようになれば、子育てや親の介護で仕事の家庭生活の両立に悩む人が仕事を辞めなくて済む可能性がある。
コロナ禍でテレワークが広がり、
「通勤に費やしていたムダな時間が有意義に使える」
「家族と過ごす時間が増えた」
などと好意的に受け止める人は多く、週休3日制が豊かな暮らしに結びつくといった期待は大きい。
また、地域のボランティア活動に参加したい人が週休3日制を選択すれば、地域の活性化につながる可能性もある。休みが多くなれば旅行者が増えるとの見方もあり、コロナ禍で苦境に陥っている観光業界を支援することにもなる、との声も出ている。
将来もらえる年金がますます減るかも......
ただ、懸念する声が少なくないのも事実だ。「まず給料が減るのではないかと心配になる」と、ある男性会社員が話すように、最大の問題は所得の減少だろう。
すでに週休3日制を導入している企業の中には、勤務する日の勤務時間を延ばすことで給与を変えない取り組みをしているところもあるが、基本給を減額する企業もあり、対応はさまざまだ。「休みが増えても給与が減って、アルバイトや副業で生活費を補うことになれば、労働環境はかえって悪化するかもしれない」といった懸念も根深い。
単純に給与が減れば、将来受け取る年金も少なくなるなど、社会保険の給付に絡んでも、さまざまな影響が生じることになるかもしれない。
自民党の1億総活躍推進本部は選択的週休3日制について、4月中に中間提言をまとめる予定で、週休3日制を導入した企業への支援措置の必要性なども盛り込む可能性もあるという。
政府は、この提言を受けたうえで本格的な検討に着手し、6月にもまとめる「骨太の方針」に反映させたい意向だが、検討すべき課題は少なくない。(ジャーナリスト 済田経夫)