セーシェル、ブータンが6割以上なのに日本は0.9%
なぜ、これほど遅いのか。その大きな理由の一つが国内で現在、承認済みのワクチンが米ファイザー製だけだという事情がある。東京新聞(4月13日)「遅れるコロナワクチン 供給本格化はGW明け」が、こう説明する。
「政府はファイザー社と、欧州で製造したものを輸入する契約を結んでいる。欧州にある同社工場の生産能力が不足していた。(今春に)能力を拡張する際、一時的に生産量が減った。また、計画どおりに輸入するにはEU(欧州連合)の承認が必要となる。空輸するたびに承認を取らなければならない。承認が拒否されたことはないが、5、6月は各十数回の承認が必要となる見込みで、今後も必ず承認される保証はない」
また、国内の事情も深刻だ。ワクチン接種作業に欠かせない医療従事者が不足しているのだ。朝日新聞(4月13日付)「ワクチン接種、綱渡り始動 看護師不足・供給量と時期見通せず」が、こう伝える。
「(感染が急拡大する)大阪府などで医療体制がひっ迫するなか、今後は注射できる看護師や准看護師の確保が課題になる。厚生労働省がワクチン接種の特設会場を設ける1391自治体に状況をたずねたところ、約2割は看護師が不足していると回答、7%が看護師を1人も確保できないと答えた」
北海道羅臼(らうす)町のように、常勤の医師が1人しかおらず、接種にかかりきりになると通常の診療ができないため、札幌市などに応援を要請するところもある。変異ウイルスがさらに拡大すると、接種のための医療従事者の確保がさらに難しくなる。
絶対的にワクチン供給量が足りないのに、早くも余っている自治体が出ているという。日本経済新聞(4月13日付)「ワクチン配分で地域差 世田谷、人口の0.2%、100%超す離島も」は、政府のバラバラな配分から生じた不思議な現象を報告している。
同紙が全国の都道府県に、今回、国から届いた4月分のワクチンの配分量を調査したところ、例えば東京都世田谷区では対象の高齢者(18万7000人)の0.8%分しかこなかったが、東京都の伊豆諸島にある青ケ島村では、高齢者の分どころか、全住民170人の3倍分もの量が届いた。ほかにも人口の多い市では対象の高齢者の1%以下の分しか届かないのに、人口減少地域では高齢者以外が接種しても余る量が届いた例が多かった。これはどういうことか。
日本経済新聞が続ける。
「国がすべての市町村に4月供給分のワクチン接種の機会を設けることを優先させた結果、極端なばらつきが出た。4月中に供給されるワクチンは最低でも1箱(487人分)が市区町村に配分される。このため、人口最多・最小の2つの自治体を比較すると、ワクチン接種できる住民の割合に差が出てしまう。ワクチンが箱単位で送られるのは、ファイザー製のワクチンが、マイナス75度で管理しなければならず、解凍前に箱から小出しにして分けることが難しいからだ」
今後は、余ったところが、足りないところにどう融通していくかが課題だが、ファイザー製のワクチンは箱から出した場合、3時間以内に輸送しないと使えなくなるという。ずいぶんムダなことをするものだ。