「週刊東洋経済」は医療テックベンチャーを特集
「週刊東洋経済」(2021年4月17日号)の第1特集は「沸騰! 医療テックベンチャー」だ。ITと医療との相性のよさに着目して、巨大IT企業がこぞって医療に進出しているという。投資額が10年前の5倍になった世界の医療テックベンチャーの最前線を紹介している。
新型コロナウイルスの感染拡大が医療テックへの注目を高めたという。医療領域で技術革新の中心になっているのが、「オンライン医療」「AI」「ゲノム分析」「再生医療」の4領域だ。
まず、グーグル、アップル、アマゾンという米国の巨大IT企業の取り組みを紹介している。最も広範に行っているのがグーグルだ。2019年に新部門「グーグルヘルス」を設立。数百人の医師や医療関係者を抱え、AIによる疾病の画像診断や、電子カルテの開発、新型コロナウイルスに関するデータベースの整備などを手掛けている。
グーグルと同じ持ち株会社アルファベット傘下には、デジタル医療を専業とするベリリーがあり、医療機器の開発、データを活用した治療法の考案などを行っている。
アップルはアップルウォッチやiPhoneなど自社のデバイス・サービスを軸に個人の健康・医療データを活用するプラットフォームを構築。厚生労働省は今年1月、心電図アプリを家庭用医療機器として認可した。
また、アマゾンは従業員向けオンライン診療サービス「アマゾンケア」を3月から米国ワシントン州の他の企業にも提供を始め、今夏には全米に広げるという。専用アプリを開くと、症状に関するいくつかの質問があり、症状のレベルに応じて、60秒以内に医師とのチャットやビデオ通話が始まるというものだ。すでにオンライン薬局もスタートしている。
医療テックベンチャーはアメリカだけではない。特集のパート2は、日本の有望なバイオ・医療ベンチャー21社を紹介している。世界初の禁煙治療アプリを発売したCureApp、AI診察支援で誤診を減らそうとしているプレシジョン、線虫を用いた尿によるがん診断を始めたHIROMATSUバイオサイエンスなどだ。研究者が自ら立ち上げた会社も多く、創業者の顔触れを眺めていると、日本発の医療テックベンチャーが確実に根付いていると感じる。
営業利益率59%の快進撃を続ける東京大学発の創業ベンチャー、ペプチドリームについて、その強みを詳しく解説している。
また、ゲームをするだけでADHD(注意欠陥・多動性障害)を治療する塩野義製薬が開発したアプリや川崎重工業などが開発した国産初の手術ロボットも取り上げている。
上場したバイオ・医療系企業36社を選び、時価総額順に並べた表を掲載している。華々しく活躍する企業がある一方で、期待を裏切るところもあるとして、赤字の見極めを喚起している。
第2特集は「背水の百貨店」。アパレルの大量退店に悲鳴を上げる地方百貨店をレポートしている。大型専門店などのテナント化をすすめる百貨店もあるが、店舗縮小が避けられないという専門家の声も。
大丸、松坂屋を展開するJ.フロント リテイリングの好本達也社長の「百貨店の"場所貸し"は加速するしかない」というインタビューを掲載している。
また、幅広く集客するより富裕層にターゲットを置いた三越伊勢丹の新戦略にも触れている。外商顧客に金と人を投入するものだ。伊勢丹の新宿本店を中心に年間購入額1000万円以上の顧客を多く抱えるという。「ニューリッチ」といわれる若年富裕層への対応とともに、地方の上客へのリモート接客を進めるという。