知ってる!?「ガラナ・アンタルチカ」 今年で発売100周年、なぜ日本に? ブラジル大使と荒井商事社長に聞いた

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   「ガラナ・アンタルチカ」をご存じか? 1921年にブラジルで発売され、今年で100周年にもなる炭酸飲料だ。原料のガラナはアマゾン流域に自生して、熟すと赤い実がなる。

   ブラジルでは、サッカー代表チームの公式スポンサー飲料にもなっているほどの人気で、「ガラナ・アンタルチカ」は、サトウキビを原料とする蒸留酒のカシャッサとともに、食品流通事業を手掛ける荒井商事(神奈川県平塚市)が輸入。日本国内の量販店で販売している。

   100周年を機に、エドゥアルド・サボイア駐日ブラジル大使と、荒井商事の荒井亮三社長に、ガラナ飲料やブラジルの食にまつわる話を聞いた。

  • 「ガラナ・アンタルチカ」をオススメする荒井商事の荒井亮三社長(写真左)と、エドゥアルド・サボイア駐日ブラジル大使(右。2021年3月23日、ブラジル大使館で)
    「ガラナ・アンタルチカ」をオススメする荒井商事の荒井亮三社長(写真左)と、エドゥアルド・サボイア駐日ブラジル大使(右。2021年3月23日、ブラジル大使館で)
  • 「ガラナ・アンタルチカ」をオススメする荒井商事の荒井亮三社長(写真左)と、エドゥアルド・サボイア駐日ブラジル大使(右。2021年3月23日、ブラジル大使館で)

強壮剤として効果のある「ガラナの実」

――ブラジルでガラナ飲料はどのようにして誕生したのでしょう。

エドゥアルド・サボイア大使「アマゾン森林にガラナという名前の果実があります。ガラナは強壮剤のような効果があるとされ、先住民は狩りに出る前にジュースにして飲んでいました。
のちにブラジルがポルトガルの植民地にされると、先住民からガラナジュース作り方を学び、ヨーロッパ人も飲むようになります。そして20世紀の初頭、ブラジルのアンタルチカ社が、ガラナの実を使った炭酸飲料の生産に着手しました」

――今ではブラジル全土で人気の清涼飲料ですね。主にどのようなシーンで飲まれていますか。

サボイア大使「子どもの誕生会から、大人のディナーまで、幅広い場面で飲まれています。色はシャンパンやスパークリングワインに似ていますね。そのためパーティで自分があまりお酒を飲みたくない時にグラスに注げば、お酒を飲んでいる人たちと違和感なく交流できます」

――世代問わず親しまれているのですね。

サボイア大使「ブラジルでは炭酸飲料とは別に、ガラナの実を粉末にしたものも売られています。強壮剤としての効果がより強く、学生がテスト前に徹夜で勉強したい時などに飲んでいます。私も外交官になるための試験を受ける際に、たくさんパウダーを飲みました」

   ここで筆者は「ガラナ・アンタルチカ」を試飲。それはガラナ特有の渋味と苦味が取り除かれて、甘い味が口いっぱいに広がる。炭酸が効いて、ひと口飲むだけで目が覚めるようで、疲れたときなどはカラダの隅々にまで爽快感が染み渡りそうだ。

――荒井商事が注力しているもう一つの商材、蒸留酒のカシャッサはどのように広がったのでしょう。

サボイア大使「カシャッサはブラジルの特産品であるサトウキビ由来のお酒です。ポルトガル人に植民地化された16世紀から、ブラジルの土地ではサトウキビが栽培されていました。
その頃からカシャッサは作られ、飲まれるようになっていました。当時はブラジル北東部の海岸近くでサトウキビが栽培されていましたが、鉱山開発のために内陸に人々が入っていくにつれて、カシャッサも全国に広がりました。 生産方法はどんどん洗練され、種類も豊富になっています。度数が高いのでストレートでは強いですが、カシャッサで作るカイピリーニャなどのカクテルドリンクによって、現在は海外でもよく知られています。
カシャッサのアルコール度数は38~48度と定められている。筆者は42度のものを、ひと口ストレートで飲んでみたが、カラダの奥が熱く、鼻からアルコールが抜けるような感覚がある。ゆっくり時間をかけて飲むか、ジュースなどで割って楽しむのが良いでしょう」

ガラナ・アンタルチカはなぜ日本に?

――ガラナ・アンタルチカとカシャッサは、どのような経緯で日本に輸入されるようになりましたか。

荒井亮三社長「1970年代後半から、荒井商事はブラジルに社員を派遣して将来の種を探していました。1980年、当時社長をしていた父・権八が、日系で初めてサンパウロ高等裁判所の判事を務めたカズオ・ワタナベさんと知り合いました。そのワタナベさんがアンタルチカ社の副社長をしていた方と知り合いだということで紹介を受け、ガラナ濃縮液の日本、東南アジアにおける独占販売権の取得に至りました。
一方、カシャッサはグレードの高いものを日本で販売したいという想いから、ここ10年くらいで輸入し始めました。ミナスジェライス州に弊社の社員が出向き、いろいろなカシャッサの工場を見た結果、いま取り扱っている商品の会社と契約するに至りました」

――年間の輸入量はどのくらいですか。また、どのような方々に親しまれていますか。

荒井社長「年間でガラナ・アンタルチカは360万本分の原料を輸入して日本で製造販売、カシャッサは6000本、輸入しています。特にガラナ・アンタルチカは、日本に滞在する21万人ほどの日系ブラジル人にとって、なくてはならない存在です。サッカーブラジル代表チームの公式スポンサー飲料になっており、ブラジルで盛んなサッカーやビーチバレーなどのスポーツをしている方が飲んでいます。日本人のマーケットにも力を入れています。『カシャッサ』は一部酒販店や当社のオンラインショップ、『ガラナ・アンタルチカ』はカルディ、コストコ、ドン・キホーテなどでも購入できます。

大使が日本でオススメしたいモノは...

ガラナ・アンタルチカで乾杯!(写真左が荒井亮三社長、右がエドゥアルド・サボイア駐日ブラジル大使)
ガラナ・アンタルチカで乾杯!(写真左が荒井亮三社長、右がエドゥアルド・サボイア駐日ブラジル大使)

   最後に、サボイア大使と荒井社長に、ブラジルと日本の関係に関して今後の展望を聞いた。

――日本でオススメしたいブラジルのドリンクやフードはありますか。

サボイア大使「ブラジルは世界有数の農業生産国で、食生活に関しては非常に豊かな国です。
トロピカルフルーツのジュースなどソフトドリンク類もブラジルで多く生産されるほか、日本市場ではブラジル産のワインとスパークリングワインが親しまれています。個人的には好きなのは、水も砂糖もまったく使っていない100%無添加のぶどうジュースですね。
輸出として品目を考えると、ブラジルは食肉の生産も豊富で、世界有数の輸出国という位置づけです。日本では鶏肉を多く輸入していますが、牛肉はまだ日本市場に出回っていません。ブラジルの食肉は規制が厳しい各国の市場に認められているので、いずれは日本にも輸出できるようにしたいと考えています」
荒井社長「可能性のある商材のお話が出ましたね。私たちも、まだ日本に広まっていないブラジル産の食料を、頑張って日本で売っていきたいと思っています」

――どのような商品が日本に入ってくるのか、楽しみですね。今後の日本との交流について、展望を教えてください。

サボイア大使「ブラジルと日本は、歴史的に見て友好関係が長いです。2021年1月には茂木敏充外務大臣がブラジルを訪問されました。また、ブラジルではクルマや和食など、日本製のモノがとても好まれています。ブラジルに在住する日系ブラジル人は約200万人ほどですが、日本のファンはブラジルに2億1000万人(ブラジルの人口)います。サッカーの試合でも、日本のチームがプレーをしているときにブラジル人は本当に応援していました。
しかし、その良好な関係に対して、経済関係が十分そのレベルに至っていないのが現状です。世界的には食料の輸出国ですが経済的な関係がまだ、ポテンシャルを十分に満たしていないと思っています。それをもっと深めていくためにも、日本とメルコスール(南米南部共同市場)間の経済連携協定の交渉開始を願っています」

   そして、サボイア大使は荒井商事との関係を、こう話す。

サボイア大使「この機会をお借りして荒井商事様に御礼を申し上げます。日本とブラジルの関係を良くしていくうえでは、人と人の関係がとても重要になりますが、その関係をよくするにはお互いにいい経験を共有するのが大切だと思います。その楽しい経験を共有するツールとなるのが、飲み物や食べ物だと思います。
荒井商事のおかげでブラジルの食品が日本で食されることが可能になっています。在日ブラジル人のためだけでなく、日本人に対しても広くそのような機会を作っていただいているので、両国の関係に対する貢献に感謝しています」

(聞き手 笹木萌)

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