メンタリストDaiGoの原点となった究極の思考法とはなにか――。
DaiGoはこの思考を「クリティカルシンキング」と呼んでいます。思考力や判断力が磨かれるので、仕事や勉強面だけでなく、家族や友人関係も好転すると解説します。どのような考え方なのでしょうか。
「悩む力 天才にすら勝てる考え方『クリティカル・シンキング』」(メンタリストDaiGo著)きずな出版
クリティカル・シンキングとは何か
この本が評判になり、amazon 1位になっていると担当者から聞きました。「クリティカル・シンキング」は新たな思考術として受け入れられているようです。じつは、クリティカル・シンキングはコンサルティング業界では比較的ポピュラーな思考術です。
「クリティカル・シンキング」は、概念的思考術、断片的思考術などと呼ばれることもあります。バラバラになったものから筋の通った一つの総合概念に整理したり、パターンを見抜いたり、物事に対する新しい見方を作り出す思考のことです。
「クリティカル・シンキング」は使用する場面に応じて難易度が異なります。コンピテンシーディクショナリーなどとも言われますが、わかりやすく解説してみましょう。
そこに問題が存在する場合、問題を明らかにするために、過去の経験に基づいた方法や単純なルールを当てはめることがあります。現在の状況が過去の状況と似ているか当てはめて比較検討することなどが当てはまります。たとえば、ある地域におけるスーパーの品揃えを見て「比較的富裕層の世帯が多い場所だ」と直感的に思ったなどが当てはまります。
クリティカル・シンキングのレベルがさらにアップすると、あてはめた仮説が本当にそれでいいのかを検証する作業がはいります。
先ほどのスーパーの品揃え以外に、都市銀行の支店が集中していることに気がついたとします。「銀行は富裕層を取り込むために、きめ細かいサービスを提供するために地域に集中しているのではないか。同地域に富裕層が多いことはほぼ間違いないと確信した」。このような分析ができればワンランク上のクリティカル・シンキングになるでしょう。
さらに、もっともレベルの高いクリティカル・シンキングになると、全く新しい概念を創造できるなどの思考が必要とされてきます。たとえば、ニュートンの「りんごが落ちるのをみて地球が回っている」などは一見したら理解不能です。その理解不能な発想を検証できることが、もっともレベルの高いクリティカル・シンキングといえるでしょう。
スーパーの品揃え以外に、都市銀行の支店が集中しているのを見ただけで、「拠点の契約件数やボリュームを算出した」、もしくは、「各社の出店状況を見ながら1年以内に同地区のシェアの過半数を抑えることが可能なプランを創出できる」などが挙げられるでしょう。
本書では、クリティカル・シンキングを一般的にわかりやすく解説していますが、クリティカル・シンキングを落とし込んでいくと、その奥深さが理解できると思います。ビジネスパーソンが覚えるべき思考術の一つであることは間違いありません。
社内に多いロジカル馬鹿に気をつけろ
クリティカル・シンキングと同様に、コンサルティング会社から派生した思考術の一つに、ロジカルシンキングがあります。ロジカルシンキングは相手を説得し、コミュニケーションを深め、ビジネスを潤滑に進めるうえで必要だと言う人がいますが、それは幻想だと申し上げておきます。
コンサルティング会社が提供しているセミナーや研修に参加すると、触発された人が急にロジカルになることがあります。「このロジックは」「ミーシーに」など馬鹿の一つ覚えです。社内には必ず「ロジカル馬鹿」みたいな人がいますが、人の気持はロジカルでは動きません。
さて、DaiGoはクリティカル・シンキングの効果として、「キャリアの成功に役立つ」「ものごとを決めるのがうまくなる」「未来を予測しやすくなる」「コミュニケーションがうまくなる」など、多くのメリットを挙げています。実現できるかはそれを使用する皆さん次第ということになりますが、かなり有益な思考術であることは間違いないと申し上げておきましょう。(尾藤克之)