「日本の食パン型は安すぎる」
別業種の工場でもいいからお菓子型・食パン型を作ってほしい――。そんな櫻井さんの投稿は大きな反響は大きかったが、実際に町工場から申し出はあったのだろうか。
「ツイートを見た数社から声をかけてもらいましたが、うち1社にはすでに断られました。今、販売されているお菓子型やパン型が、金属板金のモノづくりの価格にしては安すぎるというのが理由です。そこは他業種の工場でしたが、見積もりをしたら採算が合わなかったのです」
馬嶋屋で販売している食パン型は1つ1000円。しかし、他業種の工場が作るとなった場合、仕入れ値は6000円で販売価格は1万円ほどになることが判明した。「1万円のパン型はさすがにプロの職人さんも買わないので...」と櫻井さんは嘆く。
「型づくりが分業制になっているのも、他業種が入り込めない理由の一つです。たとえば、食パン型を作るのに『折る』という工程がありますが、折る前の『板をカットする』業者が見つかりません。業者が見つかっても、材料が重いので運送コストがかなりかかってしまいます」
他業種の工場での製作は、実現のメドがたたない。日本の工場で製品を作り続けるためにじゃ、「今、稼働している工場をなくさないようにすること」だと櫻井さんは話す。
今後は販売店と工場が協力して、後継者を探すという話も出ているそうだが......。
櫻井さんは、
「この先どうなるかなって不安はやっぱりありますね。プロが使う食パン型とお菓子型をどうやって残していくかというのは、先が見えない課題です」
と話している。