毎月、一定の金額を投資する少額投資非課税制度「つみたてNISA」の利用者が急増しているようです。なかでも、20~30歳代の口座開設が増えていることから、若年層を中心に資産形成の意欲が高まっていることがうかがえます。
「いくらにしたいか」という目標額を明確にできたら、次に考えるのは「いくら投資するか」という元本のこと。
そこで今回は、資産形成における元本について、あらためて整理したいと思います。
「まとまった資金が必要」 これってホント?
「資産形成をスタートするには、まとまった資金が必要」と考える方は少なくないようです。なかには、資産形成をはじめるために、頑張って預貯金をしているという方もいらっしゃるようです。果たして、それは正しい考え、行動なのでしょうか。
まずは下表(図1)をご覧ください。
元本・利回り別に運用成果をシミュレートしたものです。赤くハイライトした部分に注目をすると、5000万円という目標を達成するためには、10%という高い利回りがあったとして、700万円以上の元本が必要になることがわかります。
「ああ......。やっぱり、まとまった資金が必要なのか」
ちょっと、待って! そう結論付けてしまうのは尚早です。なぜなら、いくらにしたいかという目標を達成するためのカギは、一括投資することだけが握っているというわけではないからです。
つまり、元本は2とおりで考えるといいでしょう。
元本は「一括投資」と「積立投資」で用意できる
下表(図2)は、20年間で5000万円という目標額を達成するための、「皮算用」です。赤でハイライトしているのは、「500万円の一括投資×7%の利回り×20年」の運用成果です。大きな成果ではありますが、残念ながら目標額には届きません。
注目してほしいのは、青でハイライトした5.8万円という数字です。これは目標額への不足分(約3065万円)のために必要となる毎月の積立額を逆算したもの。つまり、500万円の一括投資に加えて、同じ条件で毎月5.8万円の積立投資を続けると、目標額に届くというわけです。元本というと、つい一括投資とだけ結び付けて考えてしまいがちですが、このように一括投資と積立投資の2とおりで考えるべきなのです。
さらに、緑のハイライトを見ると、仮に一括投資額が0(ゼロ)であっても「6.5万円の積立投資×10%の利回り×20年」で、目標額に届くことがわかります。このように、積立投資は、とても大きなチカラを秘めた元本といえます。
あくまでも「皮算用」であることを理解しなければいけませんが...
上の表は、あくまでも固定利回りでのシミュレーションであることには注意が必要です。価格が上にも下にも変動する運用では、直線的にリターンが積み上がっていくことはあり得ませんから、表のとおりに元本が増えていくことは絶対にありません。ですから、あくまでも「皮算用」として参考程度に理解しておくのが正解。
ただ、「500万円の一括投資と5.8万円の積立投資で5000万円が見えるのか!決してラクではないけれど、頑張ってみようか」と、前向きな気持ちになれたのではないかと思います。
まとまった資金が用意できないからと二の足を踏む必要はありません。元本は、一括投資と積立投資の2とおりで用意できると考え、1日でも早く資産形成をスタートしてしまうことをオススメします。(日興アセットマネジメント マーケティング部 乙部洋輔)