アスリートにワクチン優先接種「東京五輪は奇怪」の怒り
さらに海外メディアを困惑させているのが、日本でのワクチン接種の遅れです。諸外国と比べても「格段に遅れている」ことが、相次いで報じられています。
Japan's vaccination drive is far behind that of most major economies
(日本のワクチン接種は、他の主要国に比べて格段に遅れている:英紙ガーディアン)
Japan was the last G7 nation to begin its vaccination
(日本はG7の中で最後にワクチン接種を開始した)
そんななか、日本政府が東京五輪・パラリンピックに出場する日本代表選手を対象に、新型コロナウイルスワクチンの優先接種を可能とする方向で検討に入った、というニュースに驚きが広がっています。
五輪選手は6月下旬までに2回の接種を終わらせる日程を想定していると報じられていますが、諸外国が優先している医療従事者や高齢者への接種を差し追いて、五輪選手を優先するのかと、批判されているのです。
英紙ガーディアンの東京特派員はツイッターで、「医療従事者や高齢者よりも五輪関係者を優先するなんて『グロテスク』だ」と痛烈に批判しています。
The Tokyo 2020 Olympics grow more grotesque by the day
(東京五輪は日に日にグロテスクになる一方だ)
「grotesque」(グロテスク)は、「怪奇だ」「異様だ」という意味ですが、かなり強烈な表現です。確かに、ワクチン接種も進んでいないのに、聖火リレーや五輪開催にこだわり続ける日本政府や五輪関係者の姿が「異様」に映ることは否定できませんし、我々日本人にとっても十分「異様」な状況です。
東京五輪をめぐってはこれまでも「異様」続きでしたが、私には今回の「アスリートワクチン優先接種」が「地雷」に思えてなりません。医療現場や高齢者施設で働く「エッセンシャルワーカー」や重症化リスクが高い高齢者よりも、健康で若いアスリートを優先するといったメッセージ、日本国内はともかく国際的な共感を得られるわけがありませんし、逆にアスリートや関係者への圧力につながりかねません。
「On the verge of collapse」(今にも崩壊寸前)なのは、大阪の医療現場だけではなく東京五輪そのもの、ではないでしょうか?(井津川倫子)