米ゼロックス買収断念は「悔しい出来事」
もう一つの柱としたのは、コピー機や複合印刷機など事務機器だ。1962年に米ゼロックスと合弁で設立した富士ゼロックスについて、2001年には米ゼロックスの持ち分の一部を買い取って連結子会社化した。
この分野をさらに強化しようと2018年には米ゼロックス自体の買収を目指した。米側からの申し出を受けてのものだったが、米ゼロックスの株主が猛反発。買収価格引き上げを求められたが、「そろばんに合わない」と判断して断念。最終的には米ゼロックスから残りの富士ゼロックス持ち分を買い取って完全子会社化した。
ゼロックスの一件は思いどおりにならなかったが、事業の構造転換全体については、だれしも合格点以上をつけるだろう。2021年3月期の連結最終利益は過去最高の1600億円を見込む。同じ世界的な写真フィルムメーカーだった米イーストマン・コダックが、2012年に経営破たんしたのとは対照的だ。
富士ゼロックスは「ゼロックス」の商号を使えなくなり、2021年4月1日に社名を「富士フイルムビジネスイノベーション」に変更したが、古森氏が退任の記者会見を開いたのはその前日。米ゼロックス買収断念を「悔しい出来事だった」とこの会見で振り返った古森氏は、「富士ゼロックス最後の日」を節目の日に選んだ。(ジャーナリスト 済田経夫)