株価、第一生命HDが15%高 自社株買い発表を好感

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   大手生保、第一生命ホールディングス(HD)の株価が、2021年4月1日の東京株式市場で一時、前日終値比14.7%(1279.5円)高の2181.5円まで上昇し、18年11月以来、約2年5か月ぶりの高値をつけた。前日取引終了後に発表した最大2000億円の自社株買いを投資家が好感した。

   このところの金利高を背景に生保株は堅調だが、大規模な株主還元策が買いを引き寄せている。

  • 第一生命株、自社株買いを好感して上昇(写真はイメージ)
    第一生命株、自社株買いを好感して上昇(写真はイメージ)
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自社株買いで1株当たりの利益が増える

   第一生命HDが3月31日に発表した自社株買いは、自己株式を除く発行済み株式の15.25%の1億7000万株を上限に市場で買い付け、取得総額は最大2000億円。取得期間は4月1日から2022年3月31日の1年間で、取得した自社株は原則として消却する。

   自社株を買い、かつ消却することは株主への還元策の代表だ。株の数が減ることで、同じ利益をあげていれば、1株当たりの利益が増える。取得株数は1年かけて市場で買い付ける上限なので株価の推移などによって最終的にどういう結果になるかわからないが、上限の15.25%まで実行すれば15.25%分の利益を残存株主が分け合う格好になる。15%あるいは2000億円というのは規模の大きい話であり、投資家の反応は良かった。

   第一生命HDは2月4日、英運用会社ジャナス.ヘンダーソンの全保有株式(発行済み株式の17%)を市場で売却すると発表。売却額は1000億円近くとみられており、これが自社株買いの「原資」の一部になるようだ。

   コロナ禍で以前より対面営業が難しく、2020年度の大手生保各社の新規契約獲得は前年比1~4割程度減少している。そうした中で2021年初めから特に米国で金利が上昇しているのは近年、超低金利が続いていただけに生保には朗報だった。

本業の保険業は逆風続き、試される「本気度」

   バイデン大統領による財政出動やワクチン普及によって景気が回復しインフレが加速するとの思惑などから、米国債10年物の利回りはこのところ1.7%程度まで上がっている。米国債を大量に保有する生保は収益改善が期待されるため、第一生命HDの株価も2020年12月末に比べて2021年3月末は22.6%上昇した。

   ただ、米国債金利は足元で一本調子の上昇ではなく一進一退の状況になっており、これがかえって米国株にも好影響を与えており、生保各社に居心地の良い環境を生み出している。

   第一生命HDは自社株買いを発表した3月31日に2021~23年度の中期経営計画も発表し、配当性向をグループ修正利益の30%以上とする方針を打ち出した。これについても市場の評価は高く、SMBC日興証券は6日に「巨額自己株取得とRadical(急進的)な中期計画の執行に期待」とするリポートを配信し、目標株価を2100円から2350円に引き上げた。

   ただ、金融市場の環境が好転し、株主還元策が投資家の関心を呼んだとしても本業の保険業は山口県の元営業職員による約19億円の金銭詐取問題など逆風続き。投資家の期待をつなぎとめるためにも本業の改革の本気度が問われることになりそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)

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