アスリート自身も肩身の狭い思いを感じる
五輪アスリートに優先的にワクチン接種するという情報については、怒りの声であふれた。
東洋大学ライフデザイン学部・准教授の高野龍昭氏は、こう指摘した。
「ハイリスクの高齢者のみならず、医療従事者へのワクチン接種すら十分に見通せていない段階で、五輪選手への優先接種を検討することは、国民のコンセンサスが得られないと思われます。とりわけ、優先接種で『後回し』とされている全国約200万人の介護従事者は複雑な感情を禁じ得ないでしょう」
弁護士の佐藤みのりさんは、こう指摘した。
「現状限られているワクチンを、誰がどのような順番で受けるかという問題は、国民の生命・健康、ひいては憲法が保障している国民の人権すべてに影響を及ぼす重要な問題です。五輪については『ワクチンを前提としなくても安全・安心な大会を開催する』と組織委員会の橋本会長も述べているところです。開催そのものについて賛否が分かれている今、本当に国民の理解が得られるのか、正しい政治判断が求められています」
こんな怒りの声が相次いだ。
「オリンピック延期が決まった昨年3月24日の1日当たりの感染者数は、東京で約40人、全国で約70人、米国1万人、ドイツ4000人であったが、現在ではどこもその10倍以上。こんな状況でもオリンピック・ファーストとは狂っているとしかいいようがない」
「聖火リレーと並んで、もはやなりふり構わずとはこのことだな。アスリートたちもますます肩身の狭さを感じるだろうな。純粋に選手を応援しようとした国民も冷めて離れるのではないか」
「有森裕子さんが『アスリートファーストではない。社会ファーストだ』と言われていましたが、五輪より大切なものが他にもあるでしょう。まず国民の命を第一にするのが政府の責任です」
(福田和郎)