「聖火リレーを中止する」東京五輪・パラリンピックの開催に公然と反旗を翻した島根県の丸山達也知事(51)。「島根の乱」という言葉まで生まれ、全国に共感のエールが広がっていたが、2021年4月6日、その丸山知事が突然、豹変した。
東京五輪組織委員会に「詫び」を入れて、聖火リレーをやると発表した。いちおう条件らしきものも要望したが、受け入れられなくもやるという。全面屈服の屈辱だ。
いったい何があったのか――。
「東京に五輪を開く資格はない」と威勢が良かったが...
島根県の丸山達也知事は2021年2月、コロナ禍における不公平な飲食店支援の是正や首都圏の感染対策の強化などを条件に、こうした状況が改善されない場合は島根県内での聖火リレーの中止を検討すると表明していた。特に、東京都の感染防止対策が不十分だとして、
「東京都に五輪を開く資格などない。小池百合子都知事は、感染症対策を話し合う全国知事会の会議に5回連続欠席している」
とまで糾弾していたのだ。
また、海外の観客受入れ断念が決まった直後の3月23日の記者会見でも、丸山知事は「当たり前」と一蹴したうえで「国内も含め、無観客でやるべきだ」と踏み込んだ。そして、あらためて第3波の検証に基づく感染予防の対応強化がない限り、五輪開催に反対する考えを明らかにしていた。
それなのになぜ、前言を翻したのか。4月6日の都道府県会館での会見では記者団から、
「東京都の状況はさらに悪くなっているではないか。なぜ、考えを変えたのか」
と、追及されると、丸山知事はこう答えた。
「2日前に自民党の二階俊博幹事長が、補正予算で不公平な飲食店支援の是正を図るというようなコメントを出した。島根が求めてきた支援を盛り込んでもらえる状況なので、足を引っ張るようなことはしたくない。聖火リレーを中止すると、島根県にマイナスを及ぼす」
と、歯切れの悪い発言に終始した。
聖火リレーについては、スポンサー企業の車列の大音量問題以外にも各地で「密」の問題が起こっている。感染が爆発的に拡大している大阪府の吉村洋文知事は4月7日の記者会見で、府内全域で公道を走る東京五輪聖火リレーを中止すると表明した。代替措置として、4月13、14両日に同府吹田市内の万博記念公園を閉め切って実施する案を大会組織委員会と協議していると明らかにした。兵庫県もこの動きに追随しそうだ。丸山知事は、もう少し待てなかったのか。