2020年、21年と2年続けて、新型コロナウイルスによる感染症の拡大という未曽有の環境変化の中で、新社会人たちはスタートを切った。
2021年度は、前年とは異なり、感染予防を徹底しながら入社式を開いた企業が多かったようだが、新人研修のオンライン化、業務のテレワーク化は広く実施されるようだ。
株式会社リクルートマネジメントソリューションズが、21年度の新入社員のコンディションデータを分析したところ、20年度のコロナ禍入社前と比べて、のびのびしていることがわかった。2021年3月26日の発表。
「ヘトヘト」割合低く
新入社員のコンディションは、モチベーションと負担感の自己申告を組み合わせて総合判定。良好な順に、「イキイキ」、「イキイキ(要注意)」、「モヤモヤ」、「ギリギリ」、「ヘトヘト」の5段階に分類した。
「イキイキ」、「イキイキ(要注意)」が良好。「ヘトヘト」「ギリギリ」「モヤモヤ」が悪化している状態と定義。調査した6年間の平均は、4月に93.8%が良好状態で、悪化している状態は6.1%だが、翌年2月には良好が79%に減少。悪化は21%になっていた。
この変化を年度別にみると、2015年度から19年度までは、コンディションが良好な社員の割合が徐々に低下する様子はほぼ同じ。ところがコロナ禍入社の20年度は、前年度までと比べてコンディションの良好さを維持する社員の割合が高まる。また「ギリギリ」や「ヘトヘト」などに追い込まれる割合は1年を通じて非常に低い。入社翌年(21年)の2月をみると、コンディションが良好な社員の割合は85.6%で、2月としては過去最高の数字だった。
テレワークで上司らと会わず気疲れ軽減
2020年度入社組の特徴について、リクルートマネジメントソリューションズは「新型コロナウイルス感染症対策による就業環境の変化の影響を強く受けたことを表している」と指摘。「テレワークやオンラインでの研修が多かった2020年度の新入社員が、オンラインでのコミュニケーションに十分に適応できているだけでなく、同僚や上司と会わないことで、これまでにあった職場での気疲れが軽減していると考えられる」と分析した。
ただ、コンディションの良好状態の維持割合が高いからといって、企業人あるいは社会人としての成長にすべてプラスかというと、そうではないらしい。
たとえば、モチベーションを測るデータの一つ「成長実感」は、例年4月が最も高く、翌年3月にかけて低下していくのに対し、20年度の場合は、4月の値が相対的に低く、その後大きな変動は見られなかった。これは「4月の値が例年に比べて低いのは、オンライン研修が多く、職場でのOJT(On the Job Training=オン・ザ・ジョブ・トレーニング、職場内訓練)を通じた働くことへの実感を十分に得られていないからではないかと考えられる」という。
リクルートマネジメントソリューションズは、
「成長実感」が希薄なのは、通常ならば新入社員が通過儀礼のように直面してきた「壁」を経験する機会が少なかったということ。「将来的にどのような影響が出てくるのか、今後も注視が必要」
と指摘する。
なお調査は、2015年4月から21年2月に取得した約2万3000人分のデータを基に、各年度の新入社員の入社後の「コンディション」の推移と、年度別の変化について分析した。