「週刊東洋経済」は「マルクスvs.ケインズ」の大特集
「週刊東洋経済」(2021年4月10日号)は「マルクスvs.ケインズ」の大特集を組み、読み応えがある。脱経済成長を旗印に支持を広げる新マルクス主義と新型コロナウイルス禍で完全復活したケインズ主義を軸に、学び直しを勧める教養色が強い内容だ。
大阪市立大学の斎藤幸平准教授による「人新世の『資本論』」(集英社新書)が、2020年9月の発売以来、20万部という異例のヒットになったことを受けた企画だという。
「資本主義が人々の生活水準を向上させる」「世界は経済発展とともに民主化する」「テクノロジーは人類に進歩をもたらす」という戦後社会を支えてきた信念とイデオロギーは、資本主義の行き詰まりと民主主義の危機によって、崩れつつある。斎藤氏は、さらに気候変動、コロナ禍、文明崩壊の危機を受けて、脱資本主義、脱経済成長とさらに急進的な論を展開している。
特集では、岩井克人・国際基督教大学特別招聘教授・東京大学名誉教授にインタビュー。岩井氏は「持続可能な資本主義は実現できる」「SDGsは資本主義の転換への大きな力になる」と語っている。
これを受ける形で、斎藤氏もインタビューに登場。よりよい資本主義、緑の資本主義によって、格差も持続可能性の問題も一挙に解決できるように見えるが、実は問題があると指摘する。資本主義のグリーン化という名目で、アフリカなど低所得国からの収奪がこれまで以上に強まる問題があるというのだ。また環境への負荷も高まると見ている。そして、「SDGsは大衆のアヘン」と批判する。
水や電力、住居、医療、教育など、誰もがそれなしには生きていけないものは、本来、商品化すべきではなく、社会的に共有され、管理される「コモン」だとし、「経済成長のための競争をやめ富をシェアする社会に。資本主義のグレートリセットが必要だ」と訴えている。
この岩井氏と斎藤氏のインタビューを、じっくり読んでほしい。
◆ 日欧米の中央銀行が正念場
第2特集は「『中央銀行』の正念場」。3月中旬に日欧米の中央銀行が相次いで金融政策の決定会合を開催したのを受けて、それぞれが異なる難題に直面し、政策の舵取りに苦心していることを解説している。日本銀行の黒田東彦総裁が説明した「金融緩和の点検」について、元日銀理事の門間一夫・みずほ総合研究所エグゼクティブエコノミストは「重要性でいえば、全体の90%はETF(上場投資信託)買い入れの修正にある」とコメントしている。
ECB(ヨーロッパ中央銀行)は、コロナの感染再拡大による景気の不透明感、長期金利の上昇、ユーロ圏19カ国の中で景況感に差があるという3つの難題に直面、より細心の経済運営を要求されている、としている。
日欧に比べて、危機下の金融政策からの「出口」に近いのが、FRB(米連邦準備制度理事会)だ。緩和縮小が焦点だという。年後半にワクチンが普及すれば米国を中心に世界経済は改善するとの期待もあり、米国の景気回復と長期金利上昇が焦点になる、と見ている。