原発事故処理の資金計画も見直し?
規制委は東電に対し、原因究明と再発防止について、第三者の評価も受けた報告書を9月23日までに提出するよう指示。また、延べ2000時間の追加検査も実施する方針で、「早く進んでも検査には1年以上かかる」(更田委員長)という。規制委は今回の命令を少なくとも追加検査が終わるまで続け、核物質防護を東電に任せてもよいと判断できる状態になるまで、解除しない方針という。
今回の事態で、柏崎刈羽原発の再稼働は遠のいた。東電は7号機について、最速で2021年6月にも再稼働させたいとの方針を示していた。年明けに、「完了」と報告していた安全対策工事のうち、実際には4件が終わっていないことも判明し、夏の再稼働は困難になっていたが、それでも年内を目指す考えだったとされる。今回の是正命令で、こうしたシナリオは実現不可能になった。
この影響は福島第一原発の処理にも関係する。政府は福島の廃炉など事故処理費用を約21兆5000億円と見積もり、うち約16兆円を東電が負担する計画。1基稼働すれば年1000億円規模の収益改善効果が見込まれる柏崎刈羽原発の再稼働は、東電の経営再建と事故処理費用捻出に不可欠と位置付けられてきた。それだけに、東電の収益計画、ひいては福島の事故処理の資金計画を見直すべき、との声が一段と強まるのは必至だ。(ジャーナリスト 岸井雄作)