東京電力の柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)で、テロなどに備える核セキュリティ対策の不備が相次いでいる。国の原子力規制委員会は2021年3月31日、東電が不正侵入を検知する設備の点検や改善活動を怠り、経営層の関与も不十分だったと断定し、原子炉等規制法にもとづき、核燃料の移動禁止という商用原発では初めての行政処分(是正措置命令)を東電に通知した。
この命令は、事実上、再稼働をできなくするもので、解除時期も見通しがたい状況だ。柏崎刈羽原発7号機は規制委の審査が終了し、東電は年内にも再稼働させたい考えとみられていたが、今回の是正命令で、見通しがまったく立たなくなり、東電の経営再建の行方も一段と不透明になった。
不正侵入を検知する設備に不具合
東電の「不始末」は大きく二つ。まず、不正侵入を検知する設備の不具合だ。核物質防護のため、立ち入りが制限される区域で、2020年3月以降、監視カメラやセキュリティゲートなどの設備が15か所で故障し、うち10か所では検知できない状態が30日以上続いていた。
東電は代替措置があり問題ないとしていたが、原子力規制庁が休日深夜に抜き打ち検査をしたところ、措置は「誰が見てもお粗末なもの」(規制委の更田豊志委員長)であることが判明。安全確保への影響が4段階で最悪の水準と評価された。
要するに、テロリストなどの外部からの侵入を許しかねない状況が長期間続いたということ。同様の不具合は2018年以降、繰り返し発生していたという。
もう一つは社員のIDカードの不正使用。2020年9月、東電社員が同僚のIDカードを使って中央制御室に不正に入室していた。警備員が不正に気づきながら、制止しないどころか「なりすまし」に協力していたという。
核物質を外部に持ち出せないようにする「核物質防護」は、原子力事業者にとって1丁目1番地ともいえる基本的な任務。そこがおろそかにされていたわけで、「問われているのは東電の核物質防護に対する姿勢そのものだ」(更田委員長)