文部科学省は2021年3月31日、学校関係者の新型コロナウイルスへの感染状況を発表した。子どもは感染しにくいといわれる新型コロナウイルスだが、児童・生徒でも1万人近い感染者がいることが明らかになった。
この調査は、20年2月に安倍晋三前首相が学校に対して実施した臨時休校が終了した6月から21年2月28日までの感染状況をまとめた。学校関係者の感染状況は、児童・生徒1万4626人、教職員2201人、幼稚園等関係者826人の合計1万7354人となっている。
年齢が上がるにつれて症状がある子どもが増える
児童・生徒の内訳は、小学校の感染者数が4943人(うち有症状者数1738人)、中学校3364人(同1725人)、高等学校6091人(同3799人)、特別支援学校228人(同85人)となっている=下表1参照。
小学校から中学校、高等学校と年齢が上がるにつれて、症状がある有症状者数が増加している。小学校の有症状者は感染者の15%だったが、高等学校では62%に上昇している。
感染経路では、小学校の児童の79%が家庭内感染で、学校内感染が4%にとどまっているのに対して、中学校では家庭内63%、学校内8%、高等学校では家庭内33%、学校内25%と活動範囲の拡大とともに、家庭内感染の比率が低下している。
これは、感染経路不明にも現れており、小学校は11%なのに対して、中学校21%、高等学校34%と増加している。
一方、教職員の内訳は、小学校の感染者数が705人(うち有症状者数529人)、中学校416人(同327人)、高等学校623人(同471人)、特別支援学校158人(同122人)となっている=下表2参照。
感染経路では家庭内感染は30%以下、学校内感染は6~18%となっている。その半面、感染経路不明が50%以上となっており、教職員の場合には半数以上は感染経路が判明していない。
幼稚園等関係者の内訳は、幼児の感染者数が527人(うち有症状者数168人)、教職員の感染者数は299人(同244人)となっている=下表3参照。
特徴的なのは、幼児の有症状者数の割合が小学生を上回っていることだ。小学生の有症状者数割合が15%なのに対して、幼児は32%と倍以上になっている。
感染経路は、幼児の場合には家庭内感染が7割以上となっているが、感染経路不明も11%にのぼっている。一方、教職員は感染経路不明が半数を占める。
同一学校での感染者は高校で多かった
同一の学校において複数の感染者が確認された事例は1247件。学校別では、高等学校の699件が最も多く、次いで小学校の259件、中学校の255件の順だった=下表4参照。
感染者数の内訳を見ると、小中学校では2人が6割程度となっているのに対して、高等学校では4割程度となっている。3人以上5人未満は小中学校で20%台だが、高等学校では30%台に増加しており、5人以上10人未満、10人以上20人未満、20人以上でも、小中学校の比率はほぼ同じだが、高等学校は一段高い比率となっており、小中学校に比べて高等学校は同一学校内での感染者数が多いことがわかる。
気になるのは、学校関係者の感染者における重症者の状況だが、児童生徒の重傷者数は0人となっており、新型コロナウイルスは子どもが重症化しにくいというのが実証された形となっている。
児童生徒等の期間別の感染者数では、20年6月の臨時休校が明けた後、7月26日までは100人未満だったが、感染拡大第2波に歩調を合わせるように感染者数が増加、7月27日~8月2日には189人、8月3~9日には325人に増加した。
その後、11月2~8日の期間までは300人以下で推移していたものの、感染拡大第3波に突入すると、11月9~15日357人、11月16~22日449人、11月23~29日493人と増加し、12月に入ると11月30日~12月6日に500人を突破して589人、翌12月7~13日には848人に急増し、21年1月4~10日には一気に1000人を超えて1774人にまで急激に増加した。
ピークは1月11~17日の1800人で、その後は急激に減少し、2月22~28日には72人にまで感染者数は減った。
だが、政府の緊急事態宣言が解除され、再び感染者数が増加しており、感染拡大第4波が到来しているとの見方が強まっている。大人の感染拡大とともに子どもたちも感染拡大することが明らかになっており、加えて、感染力が強いと見られる変異ウイルスの感染拡大が懸念されていることから、今後、子どもたちの感染拡大には十分に注意が必要だ。(鷲尾香一)