新年度がスタートした2021年4月1日、多くの企業で入社式が行われた。新型コロナウイルスの感染拡大で、オンラインで行われたところが多かった。
そんな非常時だからこそ、多くの社長さんが心の底から新入社員を歓迎し、「一緒にこの危機を乗り越えて行こう!」
とエールを送った。
J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部が、「心に響く社長の挨拶」を独断で選んでみた。
「打てば響く」素早く行動を起こすことだ
ビジネスの基本姿勢について、わかりやすく説き起こす人が多かった。総合重工業メーカーのIHIの井手博社長は、シンプルな言葉でこう注文した。
「『打てば響く』姿勢を意識していただきたい。変化する時代で大切なことは、小さな予兆や問題を見逃さず、それらを偏りなく伝え、素早く必要な行動を起こすことだ。日常の業務の中で素早くレスポンスすることを心掛けて欲しい。お客様への対応や新しいビジネスのヒント、安全や品質、コンプライアンスなどあらゆる面で反応の速さは企業としての強さとなります。そのうえで、『Realize Your Dreams』(夢を現実に)に苦難を乗り越えて進んでいただきたい」
伊藤忠商事の石井敬太社長COOは、「社会への使命」について、熱く語った。
「『ひとりの商人、無数の使命』を常に心に留めて欲しいということです。近年、企業経営におけるSDGs(エスディージーズ)の重要性が一段と高まりを見せています。その中で、売り手と買い手、社会の『三方よし』という言葉が引用されます。『三方よし』は当社の創業者、伊藤忠兵衛の経営哲学ですが、その商いの心を実現するためには『ひとりの商人、無数の使命』を果たさなくてはいけません。常に何が自分の使命かを自発的に考え、行動を起こしてほしい。皆さんの柔軟な発想と創意工夫で、取引先、株主、周囲のさまざま人の期待と信頼に応えていってほしいと強く願います」
ビジネスでは常にポジティブに物事を考えていこう、とエールを送ったのが積水化学工業の加藤敬太社長だ。
「『上向きのスパイラル』という言葉を私はよく使います。例えば、企業が好業績を続ければ、その勢いのもとにヤル気や様々な才能のある人材が集まり、その多様な人材の活躍によってさらに業績が上がるということです。逆のケースである『下向きのスパイラル』から『上向きのスパイラル』に転換させるためには、大変なエネルギーが必要です。『上向きのスパイラル』を続けるためには『自分に言い訳をしない』ことです」
そして、こう続けた。
「うまくいかない時は、どうすればこの状況を改善できるのかを考え抜き、自分自身で実行し、上司や関連部署へ提案するなど、前向きな行動に転換してもらいたい。そういった一段上の行動を目指す姿勢が『上向きのスパイラル』を呼び込むのです。自分の無限の可能性を信じて、自分に言い訳をせず、挑戦を続けてください」
「会社にしがみつくな。起業してどんどん去れ」
一方、容赦がないほど厳しくミッションを求めたのは、コカ・コーラ・ボトラーズジャパンの外国人社長、カリン・ドラガン氏だ。
「みなさんには、企業理念の『Paint it RED! 未来を塗りかえろ』を総称とする『ミッション、ビジョン、バリュー』を十分に理解し、体現できるように努めていただきたい。ミッションの実現には、次の4つのバリューを常に意識して行動してほしい。『Learning』多くのことを学び、『Agility』機敏に行動することで、『Result Orientation』結果を出す。そして、すべての活動のベースには『Integrity』誠実さがある。この中でも特に『Learning』は非常に重要だ。なぜなら、私たちのビジネスはいつも新しい発見や気づきから学び、新鮮なアイデアを取り入れ、常に機敏に活動して、結果を残すための努力を続けることで初めて成長できるから。みなさん、入社後も学び続けることを忘れないで!」
ところで、新入社員に対して、のっけから「会社にしがみつくな。どんどん起業して会社を去ってほしい」と呼びかけたのが総合商社、双日の藤本昌義社長だ。
「みなさんには、会社にしがみつく社員ではなく、自ら起業して独立する気概を持っていただきたい。型破りな人材になってほしい。ただし、型破りと形無しは大きく異なります。型破りとは、ビジネスの基本を身につけたうえで、変革していくこと。形無しとは、ビジネスの基本を知らない無礼者です。双日でビジネスの基礎、いろはをしっかりと学んでいただき、双日を帰るべき母港として、次の世界に飛び出していける人材になってほしい。どんな時も誠実な心で世界を結び、新たな価値と豊かな未来を創造する、これが双日の企業理念です。一緒に双日の新しい未来を築いていきましょう」
さて、新型コロナウイルスの感染拡大が続く現在、これからどうなるのか――。トヨタ自動車の豊田章男社長は、挨拶の最後に「視点を変えて明るい未来を見よう」と、こう呼びかけた。
「みなさんの中には、人生の節目をコロナ禍で迎えたことについて、『運が悪い』『なぜ自分たちが』と思っている人もいるかもしれません。少し視点を変えてみたいと思います。みなさん、窓の外を見てください。満開の桜が見えませんか。耳を澄ませば鳥のさえずりも聞こえます。人間以外の生き物は、コロナ禍であってもこれまでどおりに暮らしています。右往左往しているのは、人間だけかもしれません。人間が主人公だ、と思っている地球という劇場の見方を変えてみるいい機会だと思います。未来のために、地球のために、私たちがやるべきことはたくさんあります。これから一緒に頑張って参りましょう」
(福田和郎)