新年度がスタートした2021年4月1日、多くの企業で入社式が行われた。新型コロナウイルスの感染拡大で、オンラインで行われたところが多かった。
そんな非常時だからこそ、多くの社長さんが心の底から新入社員を歓迎し、「一緒にこの危機を乗り越えて行こう!」
とエールを送った。
J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部が、「心に響く社長の挨拶」を独断で選んでみた。
「コロナで苦しむ人々のために一緒に戦おう」
コロナ禍で苦しむ人々のために一緒に戦おうと熱い思いを語る社長が多かった。中小企業支援のウェブサイト構築を手掛けるTKC(栃木県宇都宮市)の飯塚真規社長は、158人の新入社員を前に熱弁をふるった。
「みなさんは、何のために仕事をするのでしょうか。お給料を得るため、また、仕事を通して自分を成長させたいという人もいるでしょう。では、お給料や、あなたの成長は何によってもたらされるのでしょうか。すべてお客様からもたらされます。そのお客様たちが今、コロナによって苦境に立たされています。飲食業、宿泊業、観光業だけでなく、さまざまな業種の中小企業は売上高が激減し、従業員さんのお給料を払えない状況に陥っています」
TKCは、政府、都道府県、市町村や金融機関が行う中小企業支援策を網羅したウェブサイトを構築するのが主な仕事だが、最近はワクチン接種のクーポン印刷と接種の履歴を管理するシステムも開発している。
顧客は苦しんでいる中小企業とそれを助けようと激務をこなしている自治体の職員や金融機関だ。飯塚真規社長は、こうしたお客様を今救わないでどうする!と檄を飛ばした。
「中小企業がどういった融資や補助金を受けることができるのかを会計データから自動判定するシステムも提供しています。ワクチン接種のシステムも迅速に提供しなければなりません。このような状況だからこそ、苦境にあえぐ中小企業と市町村の職員さんの支援を、みなさんと一緒に取り組んでいけることをうれしく思います」
メタウォーター(東京都千代田区)は浄水場や下水処理場、ごみ処理施設向け設備などの設計など水環境の整備を仕事とする会社だ。やはり多くの企業を顧客としている。中村靖社長は、お客様たちの「ぬれぎぬ」を晴らそうと呼びかけて、ハリウッドのアクション映画を引き合いに出した。
「みなさんは映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)に登場する『イモータン・ジョー』を知っていますか。核戦争で荒廃した未来、彼は暴力で水源を支配しています。人々は彼の理不尽に耐えて暮らしています」
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」はトム・ハーディ とシャーリーズ・セロンが主演。強烈なキャラクターたちが大集合する映画だが、なかでも悪の帝王「イモータン・ジョー」が、水も石油も尽きかけた荒廃した砂漠で水を独占、恐怖と暴力で民衆を支配する物語がすさまじい。中村社長は、環境保護政策が厳しくなった現在、多くの企業が「イモータン・ジョー」のような「悪のぬれぎぬ」を着せられているという。
こう語った。
「現在、水・環境インフラの持続という社会課題解決のために公民連携が進むなか、民間企業が『イモータン・ジョー』になるのではないかと心配する声があります。この『ぬれぎぬ』を解消するカギはデジタルです。我々は仕事をデジタル空間に記録する方法を獲得しています。それは透明性を担保することであり、信頼につながります。デジタルが浸透することで社会課題を解決する。これこそがDX (Digital Transformation/デジタルトランスフォーメーション)です。みなさんはZ世代と呼ばれる人たち。デジタルネイティブのみなさんなら、真のDXをさらに進めてくれると信じています」
リンカーンとマンデラの「転んだら起きよ」という言葉
物流大手の近鉄エクスプレスの鳥居伸年社長も、コロナで困っている国内外の顧客を救うために、デジタルネイティブ世代の新入社員に期待のエールを送った。
「当社は物流業者であり、海外でも生活維持に欠かせない事業として営業が許可され、ロックダウン時にも外出許可証を行政から付与されています。今、サプライチェーンを維持するためにはDXが欠かせません。みなさんはデジタルネイティブ世代。情報の収集能力は他の世代より優れ、自分なりの価値観をしっかりと確立している方が多いです」
ただし、情報だけで判断をするのではなく、できる限りチャレンジをして実体験を重ね、そこから一層成長してほしいと、座右の銘にしている言葉を贈った。
「最後にマザー・テレサの有名な言葉を皆さんに贈ります。
思考に気をつけなさい。それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい。それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい。それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい。それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい。それはいつか運命になるから。
自分を肯定し、ポジティブな思考を心がけることで運命は切り開けて行く、と解釈できると思います。皆さんの成長と活躍を大いに期待しています」
電気機器メーカー、明電舎の三井田健社長も著名人の言葉を新入社員に贈った。まず、社会に出ることを登山にたとえて、こう語りかけた。
「みなさんは、空っぽのリュックサックを背負って、これから登山を始めることになります。リュックサックに色々詰めていく重要な時期です。大事なことは足腰を鍛えておくこと。登山の途中で色々な出会いがあります。暴風雨に遭うこともあります。いろいろな経験を積み重ねて人生を送ることになります。どんな状況にも対応できる足腰が重要になります。10年後に振り返って『やりきった!』と思える2020年代にしてください」
そして、リンカーンとネルソン・マンデラの言葉を引き合いに出した。
「リンカーンにこんな言葉があります。『あなたが転んでしまったことには関心がない。そこから立ち上がることに関心がある』。きっと、あなたが立ち上がる姿を見ている人はいます。だから、どうか転ぶことを恐れないでください。ノーベル平和賞受賞のネルソン・マンデラもこう言っています。『生きるうえで最も偉大な栄光は、決して転ばないことにあるのではない。転ぶたびに起き上がり続けることにある』と」
「はたらいて、笑おう!ハハハハハ!」
「はたらいて、笑おう!ハハハハハ」と明るく新入社員を迎えたのは、総合人材サービスのパーソルホールディングスの和田孝雄社長だ。和田社長は、オンラインの入社式で、同社のグループビジョンである「はたらいて、笑おう。」について、こう説明した。
「私が考える『はたらいて、笑おう。』。それは『笑って、はたらこう』ではありません。仕事は決して楽しいことばかりではない。時には苦労や大きな壁が現れることもある。それでも、自分で意志を持って選択したことなら、たとえ大きな壁が立ちはだかっても乗り越えられるはず。その壁を乗り越えた時、自分ならではの『はたらく』が見つかり、その先に『笑顔』があると考えています。世界中で『はたらいて、笑おう。』の実現を目指して一緒に頑張りましょう!」
リコーの山下良則社長は、社員へのあふれんばかりの愛情をこう示した。
「リコーグループの創業の精神は『三愛精神』の実践です。三愛精神とは『人を愛し、国を愛し、勤めを愛す』とした創業者市村清の言葉です。私は入社以来、悩むときにはいつもこれを原点にしてきました。『勤めを愛す』、働くことを愛するというのは、とても意味深いです。仕事は、自ら熱意と責任感を持って主体的に取り組めないと愛せません。それができる会社にしたいと、けさ、日本経済新聞に一面広告を出しました。みなさんを含む、新社会人全員に、ようこそ! 働く仲間へという想いを込めました。働き方を、みなさん自身が選択するという意味を込め、マイノーマルと呼んでいます。働き方は社員の数だけあっていい。私の口癖の一つが『企業の宝は社員のモチベーションである』です。そんな環境づくりが社長である私の使命です」
(福田和郎)