世界10か国の、在宅勤務を頻繁に行う従業員の41%が在宅勤務に不満を持っていることが、米国ミシガン州に本社を置くオフィス家具メーカーのスチールケースの調査でわかった。2021年3月23日の発表。完全に満足している人は19%に過ぎないという。
世界中の多くの企業が在宅勤務を強いられるなか、それによる生産性やエンゲージメント(会社への愛着心)の低下や、イノベーションが起こりにくくなることによる企業の損失は小さくないようだ。
従業員の自宅の作業環境「ベッドやソファ」28%
調査によると、在宅勤務のメリットには「通勤しなくてよい」(37%)ことや「集中できること」(28%)が挙げられた。
その半面、課題では「孤立感」(38.4%)や「イノベーション/新しい考えの低下」(18.2%)、「意思決定スピードの低下」(14.9%)、「責任所在の明確化」(12.6%)があった。
企業も当初は短期間ということで導入をためらっていた従業員の働き方の選択肢について、真剣に考えるようになったようだ。その割合は、2020年4月時点から6か月後には、38%増加し、現在では世界の企業の87%が従業員の働く時間や場所を選択できるような柔軟な仕組みを目指すようになった。
自宅での適切な仕事環境の欠如も不満の要因の一つで、たとえば在宅勤務の従業員の36%は「気が散らない、集中できるスペースの確保」が難しく、28%はベッドやソファで仕事をしていることがわかった。9%が、依然としてベッドが仕事スペースになっているという。
ただし、すべての人が同じ課題に直面しているわけではなく、75%以上の経営幹部や管理職はデスクで仕事をこなし、46%が人間工学に基づいたチェアを使用しているのに対して、従業員となるとその数字は48%と24%と低くなり、「従業員の自宅での仕事環境の不備が顕著に現れている」と、スチールケースは指摘する。
オープンスペースがオフィスの重要な役割になる
一方、日本のオフィス環境について、日本スチールケースのセールスディレクター、塩田 雅俊氏は、
「コロナ禍で、経営者と従業員の双方にとって、働くことの意味、オフィスの役割を見直す機会となりました。また、ITテクノロジーを駆使したことで、働き方改革やABW(Activity Based Working=「時間」と「場所」を自由に選べる働き方のこと)のコンセプトなどが加速したことがあります」
と話す。
グローバル調査の結果に、
「日本ではマスクをする習慣がルール化され、また文化として存在することもあり、『安全対策の順守』が他国に比べて浸透しています。スチールケースのグローバル調査によると、従業員のオフィスに対するニーズとして、オフィスは『人との交流により、コミュニティ意識、帰属意識を感じる場』であると同時に、『個人とチームの生産性をサポートする場』であることが求められていることがわかりました」
こうした結果から、
「企業はオフィスワークとリモートワーク、それぞれのメリット、デメリットを認識し始めています。個人作業とチーム作業を効率的に達成させるための最適な『出社率』に対する企業の模索が始まっており、今後はオフィス規模の『最適化』が加速するでしょう。
オフィスの大きな役割は、人との交流により、コミュニティ意識、帰属意識を感じる場になってくると考えています。これらの意識の活性化のため、かつてオフィススペースでは脇役だったラウンジやカフェカウンターのようなオープンスペースがオフィスの重要な役割を果たすようになるのではないでしょうか」
とみている。
なお調査レポートは、アメリカ、カナダ、メキシコ、イギリス、フランス、スペイン、ドイツ、インド、中国、オーストラリアの10か国、3万2000人超を対象に実施。2020年4月から9月に実施した8つの主要調査をまとめた。