2021年4月1日から、商品やサービスについて消費税の「総額表示」が義務付けられた。店頭には、消費税額を含めた価格が商品に表示されることになる。
価格表示が変わることで、消費者の購買行動に影響することが見込まれ、事業者のあいだでは「値上げ」と誤解されることを警戒して値下げに踏み切る動きもみられるという。
調査会社の株式会社ネオマーケティングが実施した消費者対象のアンケート調査では、8割以上が総額表示に「賛成」と回答するなど総額表示化を歓迎していることがわかった。
税別表示、会計時「高く感じた」女性8割
調査によると、小売りの価格表示で総額表示が、4月1日から義務付けられることについて、消費者の71.8%が知っていたと回答。また、ふだんの買い物で、価格表示の税別と税込について意識しているか聞いたところ、「かなり意識している」(23.8%)と「意識している」(45.8%)を合わせた69.6%と、ほぼ7割が意識していると答えた。
それでは商品価格が税別で表示されていたことで、「会計時に思っていた金額よりも高く感じた経験があるか」との問いに、女性の80.2%、男性の70.6%で全体では75.4%が「(高く感じた)経験あり」と答えた。
表示が税別か税込かを多くの人はふだん意識しているとはいえ、多くの人が税別表示の買い物で、実際に支払う金額を低く見積もった経験があることが示された。
総額表示の義務化によって、表示価格が上がることで義務化前と比べて買い控える可能性はあるのか聞くと、買い控えの「可能性あり」は男性20.6%、女性24.2%、平均で22.4%と、約2割にとどまった。
これまでは、税別、税込どちらの表示にするかは店舗の裁量。消費増税(2019年10月)に対応するための特例として認められたが、この混在状態について、「まぎらわしいと思う」(58.1%)「たまにまぎらわしいと思う」(30.7%)を合わせ88.8%と、9割近い人がまぎらわしさを感じており、4月からの義務化は消費者にとっては「正常化」といえるかもしれない。
「義務化」について意見を求めると「賛成」は84.6%とポジティブに受け入れられていることがわかった。
ユニクロは値下げ、すでに「総額表示」で販売
国税庁では総額表示の義務化にあたり、価格の表示方法にいくつかのパターンを例示した(標準税率10%を適用した場合)。
(1)11,000円
(2)11,000円(税込)
(3)11,000円(税抜価格10,000円)
(4)11,000円(うち消費税額等1,000円)
(5)11,000円(税抜価格10,000円、消費税額等1,000円)
調査では、(1)~(5)のどの表示を望むかを聞くと、(2)の「11,000円(税込)」が51.2%と5割以上の支持を集めた。
総額表示の義務化は2004年4月からの実施が予定されていた。しかし、19年10月に消費税率が10%に引き上げられたときに、「価格は税抜」などの表示を付ければ税抜表示が許された、「総額表示の特例」が設けられた。
2021年4月1日から義務化されるのは、この特例が3月31日に終了したため。この特例は、レジの税率設定やメニュー表、プライスカードなどの変更するための猶予期間として設けられた。
総額表示の義務化によって、消費者にとっては支払う金額がひと目でわかるようになるメリットがあるが、その一方で事業者は、消費者が値上げと感じて買い控えるようになり、売り上げに悪影響が出るのではないかと警戒している。
ファーストリテイリングではその対策として、傘下の衣料大手ユニクロやジーユー(GU)が、すでに3月12日から、全商品を実質値下げし、それまでの本体価格を「税込価格」に変更した。
また、モスバーガーのモスフードサービスでは4月1日から、イートインとテイクアウトの価格を統一。1円単位の端数をなくす価格改定を実施し、一部の商品によっては値下げとなる。
なお、ネオマーケティングの調査は2021年3月19日~22日に、「ふだん買い物をする20歳以上の男女」を対象に実施。1000人から、有効回答を得た。