3割しかいない旧行派閥の出身者が組織を動かす
みずほ銀行が相互保身に流れた原因は、3行合併であるうえに旧興銀という戦後長きにわたって政策金融としてある意味国策の一端を担ってきた、他の都市銀行とは一線を画するエリート中のエリート銀行が名を連ねたことにもあります。
そのため、みずほ銀行はスタート時に、実質旧興銀部分をみずほコーポレート銀行として切り離します。結果、3行の融和は進まず、時々のトップは長らく他の旧行勢に「遠慮」や「配慮」を見せる姿勢を取らざるを得なかったのです。そして、トップを含めた重要ポスト人事を3行で分け合う「たすき掛け」が延々行なわれ、歴代トップの確固たるリーダーシップの確立を阻んできたのです。
すでに全社員の7割は合併後入社であり、「旧行派閥など今は昔の話」と、みずほの幹部社員は否定します。しかし、残りの3割である旧3行出身者は組織を動かす中枢部に集中しているわけで、暗黙の旧行意識がそこに存在しないはずがありません。
システム障害で表に出た顔を見てください。持ち株会社みずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長は旧興銀出身、みずほ銀行の藤原弘治頭取は旧第一勧銀出身、次期頭取に指名されていた加藤勝彦常務は旧富士銀出身です。「たすき掛け」は厳然と存在しているのです。「たすき掛け」人事は不要な相互配慮という経営の保身以外の何ものでもなく、保身が強いリーダーシップづくりを阻害し続けているのです。
みずほ銀行は、3者均衡統治の産物であった旧統合システムを二度目の大障害を機に、一からの再構築を決断し、4500億円の巨額を投じて一昨年ようやく稼働に漕ぎ着けました。なのに、なぜ今回また、と思われるでしょうが、今回の4連続障害は冒頭に書いたとおり「人災」です。
すなわち、強いリーダーシップがないがために、トップのリーダーシップが組織の隅々にまで行き届かず、抜けや緩みが組織の日陰部分に発生して事故や事件につながるのです。