今春(2021年3月)卒業の大学生の就職内定率は96.1%と、前年(95.4%)と同じ水準であることが、リクルートキャリア・就職みらい研究所の「就職プロセス調査」でわかった。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で選考が滞り、途中では昨春卒と比べて内定率は大幅に低下したが、最終的には回復した。
コロナ禍の悪影響が幅広い業種に及んだことから、その影響が受けにくい「公務員・教員」の進路選択が増加したことも示された。3月26日の発表。
「進路確定率」は低下
文系・理系別の卒業時点での就職内定率は、文系が96.2%で前年(95.3%)をやや上回ったが、理系の95.8%は前年と同じだった。2021年卒を対象にした、20年6月1日時点での「就職プロセス調査」では、前年比13.4ポイント減の56.9%。「面接など対面での選考を受けた」という回答が50.1ポイント減の21.4%などコロナ禍の影響で選考が遅れていたが、12月~1月に追い込みがかかった=下図参照。
今春卒業時の調査でわかった男女別の内定率は、男性は95.1%(前年94.9%)、女性は97.1%(同96%)だった。関東、中部、近畿の地区別の内定率は、関東96.3%(前年95.1%)、中部99.1%(同95.5%)、近畿97.4(96.2%)。
「進路確定状況」をみると、「民間企業」が76.7%で前年(79%)より減少したのに対し、「公務員・教員」が6.3%で前年(5.3%)より増加。コロナ禍のなか、給与面でより影響を受けにくいと考えられる「公務員・教員」を目指す流れがやや強まった。
「進路確定率」は94.2%で、こちらは前年(96.7%)に比べて2.5ポイント減少し、進路を決め切れていない学生の割合が増えたことが示された。
コロナ禍の環境のもと「公務員・教員」志向が高まるなど、就職をめぐって「安定性」がカギとなるなか、例年と比べて学生が当初想定していたような活動にはならなかったことが考えられると、リクルートキャリアは分析。内定は得ているものの、進む踏ん切りをつけられないケースがあるという。
調査では、「もう一度就職活動するとしても、今の就職予定先と同じ企業(団体)に就職したい」かどうかを質問。回答者の考えが「就職したい」ことに「あてはまる」か「あてはまらない」かを聞いたところ、「どちらかというとあてはまる」(30.3%)を合わせ、「あてはまる」と回答した人は48.4%(前年45.7%)。また、「どちらかというとあてはまらない」(12.1%)を合わせた「あてはまらない」人は19.4%(同17.2%)と、どちらの回答も増えており、リクルートキャリアは、就職予定先をめぐって肯定派と否定派がより鮮明化したのが今回の特徴という。いままでにない環境の中での就活を経験し、就職予定先ついての受け止め方も複雑になっているようだ。
また、「就職先を確定する際に決め手」については、前年と同じ「自らの成長が期待できる」(49.8%)が1位だったが、前年(56.1%)より6.3ポイントも減った。
一方で、2位の「会社や業界の安定性がある」(34.9%)は、前年(31.5%)から3.4ポイント増。「公務員・教員」になる割合の増加と合わせ、「学生の安定志向がうかがえる」結果になった。