新型コロナウイルスの感染拡大を契機に増えたテレワーク。在宅勤務などで仕事をしている人たちは、社長や上司、同僚らとの心理的距離(気持ちのうえでの距離)をどう感じているのだろうか――。
平均して週2日以上テレワークをしている人に、社長との「気持ちのうえでの距離」を聞くと「違う都道府県にいる(500キロメートルくらい)」と回答した人が23.9%と最も多かった。
JTBグループでさまざまなコミュニケーションサービスを提供している株式会社JTBコミュニケーションデザインの調べでわかった。3月23日の発表。
頻度高いと上司との「距離」も長く
社長との「気持ちのうえでの距離」について、2番目に多かった答えは、「別の部署、別のフロアにいる(30メートルくらい)」の21%。また、「違う星にいる(4億キロメートルくらい)」が14.4%、「海を隔てている、違う国にいる(1万キロメートルくらい)」が10.8%あり、二つを合わせ「1万キロ以上」の回答は25.2と、週2日以上のテレワーカーの4人に1人にとって社長は、宇宙や外国にいるのに等しい感覚のようだ=下の円グラフ参照。
「違う星にいる」という回答は、テレワーク日数が多いほど多く、「ほぼ毎日」の場合は18.3%。「テレワークの増加は、社長との心理的距離を遠ざける要因になることが推測される」と、JTBコミュニケーションデザインは指摘する。
直属の上司との「気持ちのうえでの距離」をみると、「姿は見えているが、少し離れている(5メートルくらい)」が34%で最も多く、「すぐそばにいる(1メートルくらい)」の24%が2位。これらと「一心同体と感じる(0メートル)」(4.5%)と合わせ、「5メートル以内」でまとめると62.5%になり、社長に比べて、かなり近いと感じられているようだ。
ただ、テレワークの日数別でみると、平均して週2日程度では、「すぐそばにいる」が32.3%と多いものの、ほぼ毎日の人では16.8%で、日数が多いほど上司との「気持ちのうえでの距離」が遠くなっている。
同僚とは「オンライン」ですれ違いも
最も親しい同僚との「気持ちのうえでの距離」では、「すぐそばにいる(1メートルくらい)」が36%で最も多く、次いで「姿は見えているが、少し離れている(5メートルくらい)」の30.6%。「一心同体と感じる(0メートル)」(10.1%)を合わせ、「5メートル以内」でまとめると76.7%。社長や上司に比べて、大変近くに感じていることがわかる。
テレワークの日数別でみると、週2日程度の人では、「すぐそばにいる」は45.9%と多いものの、ほぼ毎日の人では27.2%。最も親しい同僚であっても、やはりテレワークが多いほど、「気持ちのうえでの距離」が遠くなっている。
同僚との「気持ちの上での距離」が「遠くなった」と感じている人らは、
「職場で会う機会も減ったし、外食、飲み会もしないので」
「ちょっとした雑談や会話のコミュニケーションがなくなった」
など、気軽な交流の機会が減ったことのほか、「オンラインの発言で、仲間の本音や微妙な心の内を知ることになったが、理解に苦しんだ。感覚の違いで、同僚だと思いたくなくなった」などの感情のすれ違いが生まれた事情についての書き込みもあった。
調査では、テレワークの頻度が社長や上司、同僚らとの心理的距離に影響を与えていることが示された。JTBコミュニケーションデザインは、「仕事へのモチベーションと関連が深い心理的距離をどう適切に保つかは組織経営にとって重要な課題と言える」としている。
今後のコロナ禍の成り行きによっては、企業にとってはテレワークの導入、拡大の判断を迫られる局面があるが、導入・拡大にあたっては「ハード面の環境整備だけでなく心理的距離を縮めるソフト面の環境整備が必須」という。
なお調査は、2021年1月29日と30日に、全国の従業員500人以上の企業にフルタイムで勤務する20~69歳の男女を対象に実施。有効回答者数は1030人。