新型コロナウイルスの感染拡大を受け、3密が生じやすい公共交通機関を避けた自動車の利用が増えたことで、レンタカーやカーシェアの人気が高まっている。
ところが、利用の拡大とともに、レンタカーやカーシェアをめぐるトラブルが増えており、国民生活センターが注意を呼びかけている。
トラブルのタネは返却時にあり!?
「消費者が事業者からクルマを借りるサービス」について、全国の消費生活センターには、年間500件あまりの相談が寄せられている。
コロナ禍のなか迎えた春の行楽シーズン。借りたクルマを使ったレジャーの増加が見込まれるが、国民生活センターでは「消費者トラブルの未然防止・拡大防止のため」として、2021年3月25日、具体的事例を公表した。
カーシェアはあらかじめ登録した会員に自動車を貸し出すサービス。利用者はレンタカーのような、その都度の手続なしに、無人ステーションからクルマを借りる。報告書では、カーシェア特有のトラブルとして、無人ステーションに起因するケースが紹介されている。
「30歳代男性」から2020年2月に寄せられた相談は、
「カーシェアを利用後にクルマを返したが、インターネット上の返却手続きをしていないとして延長料金を請求された。クルマは終了時刻の10分ほど前に返却した。手続きは車両の返却に加え、アプリ内の終了ボタンを押さなければならないが、手続きしたつもりだった」
と、アプリの返却時の操作を勘違いしたことがきっかけだった。
「30歳代女性」から2019年8月に寄せられた相談も、
「突然、カーシェア業者から連絡があり、『スモールランプがついたままになっていたためバッテリーが上がり交換したので、その費用1万8000円を請求する』と言われた。約2週間前にクルマを利用したが、その翌日に利用した人からエンジンがかからないとの連絡を受け、調べたという。借りた時刻はまだ明るい時間帯なのでスモールランプをつけた覚えはない」
と、返却時のトラブルだった。
スマートキー紛失...「そんなに高いの?」
「50歳代女性」からは2020年8月、ふだんと別の車両を使うことになり、操作法がわからず戸惑ったことが報告された。
「いつも同じ車種をカーシェアで定期的に利用しているが、今回予約できなかったので、別の車種を利用した。ところが、エンジンをかけて、サイドブレーキを探したものの見当たらず、操作方法の動画を見てもわからなかった。事業者に電話をかけたがつながらなくて困った」
さらに、出かけた先で故障により動かなくなった経験の相談例も。「カーシェアでレンタカーを借り、他県のキャンプ場に着いたら、電気系統が故障してクルマが動かなくなった。業者はクルマを取りに来たが、帰りの手配は自分で行い、積んでいた荷物についても自分で送付するよう言われた」(2020年8月、30歳代女性)
また、クルマの鍵を紛失したトラブルもあり、
「カーシェアで借りたレンタカーのスマートキーを紛失した。業者から『交換費用の実費として18万円請求する。コンピューターまで替えた』と言われた。もっと安い価格で交換できると思うのだが、妥当だろうか。ホームページには鍵の紛失時は、自己負担となることの記載があった」(2019年11月、50歳代男性)
といった相談があった。
国民生活センターでは利用者に向け「カーシェアは、出発前の手続きが簡単、短時間でも借りられるなど、気軽に利用できるメリットがある一方で、ふだん利用していないクルマを運転する際に操作方法がわからず、確認もできないケースがあるなど、『無人』に起因するトラブルも発生している。
利用前に事業者のホームページで操作方法を確認する、返却時は忘れ物やライトの消し忘れはないか等を確認し、返却手続きを確実に行いましょう」とアドバイスしている。
利用件数、会員数ともに増加
カーシェア大手、オリックス自動車株式会社は、コロナ禍でカーシェア需要が増えたことを受け2021年3月から、カーシェアリングサービスに平日限定で乗り放題となる「個人平日定額プラン」を導入した。
カーシェアの月額固定での乗り放題プランは大手事業者で初の試みという。
オリックス自動車によると、家族の送り迎えや買い物など、日常生活でのカーシェアの利用頻度が増加傾向。2020年4月に緊急事態宣言が発出され5月に解除されたが、同年9月~2021年1月の間の同社カーシェア会員の利用状況は1回あたり3時間以内の利用件数が前年同期比約23%増、3時間以上6時間以内の利用は同約34%増となった。
また、レンタカー事業を行っているタイムズモビリティ株式会社のカーシェアサービス「タイムズカーシェア」は、2021年4月から「タイムズカー」に名称を変更するのに合わせ、長時間の利用しやすくなるよう料金体系の一部改定を予定。20年3月に137万6000人だった「タイムズカーシェア」の会員数は、10月に150万6000人となり、21年2月には154万5000人に増加した。名称変更と料金体系の一部改定で、さらなる利用増を期待している。