東芝経営陣の正念場 「物言う株主」が揺さぶる「不利益な議決権行使」の実態解明のゆくえ

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「株主軽視」の姿勢 東芝経営陣に批判

   エフィッシモの提案については、事前に米国のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズなど議決権行使助言会社2社が賛成を推奨していたことから、一定の支持を集めるとはみられていた。実際に、エフィッシモの発表によると、米大手機関投資家のカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)、フロリダ州の退職年金基金を運用するステート・ボード・オブ・ アドミニストレーション(SBA)が、同ファンドの提案に賛成票を投じたという。東芝経営陣の株主軽視とも見える姿勢への批判がある程度広がったといっていいだろう。

   再調査はどうなるのだろうか――。

   2020年7月の株主総会については、「当時の経済産業省参与が、東芝に不利益な議決権行使をしないよう圧力をかけたとの報道があった」(エフィッシモ)というように、経産省も絡んでの実態解明が焦点になりそうだ。

   じつは、この総会は、安全保障に関わる日本企業への外資規制を目的に、6月に改正外為法が全面適用されてから最初の総会だった。東芝も同法の対象なので、エフィッシモの投票が株主総会前日まで承認されなかった。同法に基づく事前審査が長引いたためとされるが、「エフィッシモが提案していた社外取締役候補を否決できるか、ぎりぎりまで見極めたうえで承認したのではないか」との見方が関係者のあいだでささやかれた。

   経産省と関係があるかは不明だが、東芝の内部調査では、大株主の1社が「ある人物から接触があり議決権を行使しなかった」と回答したことも明らかになっている。この「人物」は特定されていないという。東芝は「会社としてこの問題に関与していない」として、「ある人物」とは無関係だから問題はないとの姿勢だが、独立した弁護士の調査で、こうした点も含め、どんな事実が飛び出すのか、注目される。

   多くの株主は、きちんと利益を上げ、配当し、あるいは株価を上げてくれれば満足する道理で、実際に東芝は半導体事業や米国の液化天然ガス事業、家電、パソコン事業を売却、再生可能エネルギーに積極投資するなど、事業再構築に着々と取り組んできた。

   この1月には東証1部に復帰を果たしたところだけに、臨時総会の議決で、経営陣としては出端をくじかれた形。裏を返せば、物言う株主との関係を「甘く見ていた」ともいえる。

   調査結果により、車谷CEOのリーダーシップへの疑念が高まり、定時株主総会で車谷氏の取締役再任をめぐり再び経営陣と物言う株主が対決する展開も予想される。東芝の現体制は正念場を迎えることになる。(ジャーナリスト 済田経夫)

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